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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.156 時代に付いて行けない者が居る

 

 最近、日本のテレビ番組を見る機会を増やしている。理由は色々あるがその第一は余りにも進む円安という課題。見聞きする範囲では、日本では円安問題を対ドルで比較する事を主に報道されている。間違いなく今は円安、ドル高の流れだが、投機家、会社経営者など為替現場に携わる方々以外の一般庶民間ではそれほどの関心がある様には見えない。
 実際は円安による物価高騰は想像以上に進んでいると思える。にも拘らず、国民の反応はそれほど危機感があるとは思えない。物価高に対する反対のデモがあるとも聞かない。日本は豊かだな、と思いながらテレビを見ている。
 物価高騰を報道するニュースも偶に見る機会がある。物価高の主なものが食料品の様だ。スーパーやコンビニなどでのインタビュー調査に答える消費者の方達が、一様に答えるのも食品の物価高騰について。直接財布に影響しているのもこの問題の様だ。
 ほとんどの方が「困った」とはいえ笑顔で回答している。照れくさい事もあるのだろうが、まだまだゆとりあるなと、つい思ってしまう。
 国民性の違いと言えばそれまでだが、もしフランスで同様のインタビューをするなら笑顔で回答する人は皆無だろう。インタビューする側はまるで怒られているような感じになるほど真剣、辛辣な表情に出会う。パンが値上げしたと言って直ぐにデモする国民である。
 常々思う事であるが、世にいう経済専門家と呼ばれる人たちの予想は余り当てにならないなーと思う。尤も、私が知らないだけだろうが、ドルがこれほど高騰すると予測した人がどれ程居たろうか。ユーロと円の関係も同様である。
 昨日はついに1ユーロが160円近くまでになった。異常な円安である。日々刻々と変化する世界情勢であれば、専門家と言われる方達でも容易に予想できないのはわかったつもりでいるのだが。それにしてもである。

 ロシアがウクライナに侵攻して戦争が始まった。この事をロシアでは戦争と言わないそうだが、どう見ても戦争である。ロシアの侵攻に対してヨーロッパ、NATO加盟国は一斉にロシアを非難して経済封鎖という対抗策で応じた。もちろん、アメリカを始めとする自由主義陣営国もこれに倣った。
 この時、日本の多くのロシア専門家、軍事専門家と言われる人たちがロシアの敗北、早期休戦を予測していた。経済封鎖をされたロシアは耐えきれないと。あれから2年になるが、戦争、紛争は未だに続いている。

 アルメニア対アゼルバイジャンの紛争が勃発して、こちらのメディアは連日この事を報じている。世の中どんどんおかしくなっていくなと思っていたら、先日から今度はパレスチナ(ハマス)対イスラエルの紛争に、一気に報道が代わって来た。今は毎晩この事がニュースのトップとなっている。
 アメリカは当然の如く、イスラエル支持を打ち出した。フランスも現状イスラエル支持の立場である。先日はイスラエル支持のデモがパリで行われ、エッフェル塔にイスラエル国旗のイルミネーションが輝いた。一方でパレスチナ支持のデモは許可が下りなかったという。それでもデモは行われ凡そ3千人が参加したと報じている。
 今懸念するのは70年代の事、パリの各所で行われた爆弾テロの再現、これだけは避けてほしいと思っている。円安の話のはずがパレスチナ紛争へと、何とも目まぐるしい時代の変化、移り変わりであることか。私の頭の中もカオス状態である。


【コストコ再訪】
 行ってみようと思ったのは、実は日本のあるテレビ番組を見たからである。前回行ったのは、コロナ騒動が起こる前だったので3年ぶりの再訪となる。
 コストコはパリ郊外にある。パリからは車で凡そ40分の距離、私が住むモントローからは1時間。前回訪れた時は大変な賑わいぶりであったと記憶している。広大な駐車場には何台もの車が駐車、客は競って備えの買い物カートを探していた。店内でも買い物カートに山と商品を積んでレジへと向かう人たちが多かった。

 私が見た日本のテレビ番組では「コストコ好き」という芸能人が、これも良い、これも安いと次々と買い物カートの中に商品を入れていく。その様子をカメラが執拗に追いかける。実は同じような場面を別のテレビ局が、別の日に同じように放映していた。
 それはまるでコストコのコマーシャルの様な報道、演出ぶりである。違うのは登場する人が芸能人からお笑い芸人に変わっただけ。これだけ露骨に演出されると、あまりいい気分では見れなくなる。とは言えコストコの賑わいぶりは画面から十分に伝わって来た。日本はやはり消費天国だと改めて痛感する。
 見ていて羨ましいな、と思ったのは惣菜のコーナー。お寿司があり、煮物、各種揚げ物が並び、客が次々と買っていく場面。生鮮食品も豊富にある。そんな場面を思い出しながらパリ・コストコの生鮮食品・コーナーへと向かった。
 食文化の違いは当然の事と解っていても欲しい物がない。洋物が好きな方には羨ましいと思うだろうが、食は日本と思う私には何とも物足りない。結局買い求めたのは12個入りのクロワッサン。これで凡そ6ユーロは確かに安い。家に持ち帰り、二日分のクロワッサン4個を別分けして、残りは冷凍保存にする。
 もうひとつ買ったのは剥きエビのレモン・サラダ風味。プラスチックのパッケージに大量のボイルされたエビが入って16・79ユーロ、結構高いな、と思いながら買い物カートの中に入れる。何日かの酒のつまみにはお手頃と納得。ワイン、ビール、焼酎にもよく合い重宝する。と私個人の買い物はこんなところだった。
 食品コ―ナに立って改めて思ったのは、流石に食肉の国フランス。各種肉類が豊富だ。牛豚羊鶏肉がケースに贅沢に並ぶ。肉好きの日本の方ならまさに垂涎の場に見えるだろうなと、そんな思いが浮かぶコーナーだ。恐らく日本のコストコより相当安いだろう。ワイン・コーナー、チーズ・コーナーの種類の多さ、値段の安さはいうまでもない。
 惣菜コ―ナにはフレンチの他にアラブ、中近東系食品も多い。中でもサラダ系の物が多く目につく。各種肉類を使ったサラダは日本人の発想にないものだ。各種肉を調理したものも多い。焼き物、揚げ物、煮物も全て洋風、アラブ風に仕上げてある。という事で手に取ることなくパスした。
 息子は東西ものに拘らず、何でも御座れの食好みなので、色々と買っていた。ちなみに牛肉の塊、各種ソーセージ詰め合わせ、直径50cmはあろうかのショコラ・ケーキ、パキスタン風の巻物などなど結構買っている。
 さらにキッチン用具コーナーも見るというので、私はイートイン・コーナーで小休止して待つことにした。前回来たときはこのコーナーでも大勢の人が飲み物や軽食をいただいていた。今回は時間帯もあるのか何家族が休んでいると感じ、広いスペースに客はまばらだ。
 席に座ってしばらく周りの様子を見る。正面に何台ものレジが並ぶ。レジは二人のスタッフが客に対応、ひとりはレジでカウントを打ち、もう一人は買った商品を買い物カートに入れる。客はその買い物カートを外に駐車した車に運ぶ。
 スタッフ二人でレジ対応をするのはコストコ独自のサービスなのだろう。他の大型スーパーでは見られない対応である。それにしても客数が減っているなと改めて思った事は、数多く並ぶレジで稼働しているのはたった2カ所という事。以前来た時は各レジに列ができたいた。

 コストコはひと種類の物を大量にパッケージして販売する方式を売りとしている。恐らく日本でもこの方式は変わらないだろう。故に大家族、こちらではアラブ系の客が多い。わが家の様に小家族では買っても持て余すことが多い。
 因みに息子が買ったショコラ・ケーキは食後のデザートとして何日も食卓に上がり、いささか食傷気味になった。もう少し販売方法に工夫があったら、客の減少に役立つのではと思ったりしている。
 テレビで見た日本のコストコに刺激されて、パリ近郊のコストコを再訪したのだが、食品、中でも惣菜コーナーでは日本のコストコに軍配を上げたい。できれば一度で良いから日本のコストコを訪れて、改めて比較をしてみたいと思っている。

 


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