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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.99 PARIES パリエス

 ボン・マルシェの食品館に行った序でにパリエスに行き、この店の銘菓のひとつカヌーガを買う。ボン・マルシェから徒歩1分足らずの距離、サン・プラシッド通りにあるバスク地方菓子専門の老舗店である。

 この店のカヌーガは美味しい。カヌーガとは簡単に言えば、柔らかいキャラメルの様なものだが、普通のキャラメルとも少し違う。その違いは、中にショコラが混じっており、歯触りが良く、歯に付かず食べやすい。言うまでもなく味も申し分ない。

 色んなキャラメルを食べたが、仮にカヌーガをキャラメルと同列にするなら、私が選ぶキャラメル・ベスト10に入る銘品だ。6種類のカヌーガがあるが、その中のひとつ、バスク産ピメンテ入りが抜群に旨い。舌にちょっと刺激を与える風味が何とも良く、そのアイデアに感服させられる。

 以前、バスク、ピレネーでBIO蜂蜜をつくる養蜂家のピメンテ入り蜂蜜を頂いた事があるが、その時の風味を思い出した。これも美味しかった。

 バスク・ピメンテとはバスク地方のエスブレットで穫れる赤唐辛子で、バスク料理に欠かせない香辛料と言われる。

 

 パリエスは1895年の創業。西南フランス、アキテーヌ地方、大西洋岸に近いバイヨーンヌで、ショコラ店としてジャック・ダメストアによりスタートした。123年の歴史を持つ老舗である。現当主は5代目になるそうだ。

 1905年、ジャックはカヌーガを考案して店の名物となる。、1914年、サン・ジャン・ド・リューズに店を作り、娘のカトリーヌに運営を任せる。このカトリーヌさんがパリエス夫人となり、その後店名がパリエスとなる。1948年、孫になるロベール・パリエスがアーモンド入りのお菓子「ムッシュ」を開発して世間の注目を浴びる。

 ムッシュは見た目マカロン・パリジャンとそっくり、その違いは殆ど見分けがつかない。しっとりとした触感で控えめな甘みのアーモンド味である。今ではバスク名物と言われるくらい有名商品となっている。

 ムッシュはバスク語で「口づけ、キス」の意味。言われてみれば艶と言い形の一部が女性の唇を連想させる様にも見えてくる。ちなみにバスク語とはバスク地方で語られる独自の言語である。そのムッシュは今でもパリエスを代表する銘菓のひとつだそうだ。

 

 パリエスがパリの現在地に出店して6年になる。オレンジ・カラーで店内を統一、明るい雰囲気のお洒落な店である。店内にはパリエス直営工房から毎朝送られてくる、数々の商品が品よく陳列されてある。店のイメージ・カラーはオレンジ色、パッケージも同じ色を中心にデザインしている。

 パリエスは代々続く家族経営の企業だそうで、その良さを生かした技術の継承、品質の徹底管理が行き届いている。結果、消費者に納得してもらえる商品を作り続けられているそうだ。

 フランスにEFCラベルと言うものがある。老舗店に行った折見かけるラベルだが、円形の中にトリコロールがあり、その中央に1本の大木が描かれてある。この認証は「環境に適応し、家族内での継承により、専門技術や品質を保持する企業に与えられる」と言う物である。メゾン・パリエスはフランスのショコラ・砂糖菓子製造関連で最初にこの認証を受けた企業だそうだ。

 パリの店に初めて訪れた時、日本語で書かれた一冊のパンフレットを渡された。それほど日本人客が多いとも思え無いのに、良くもこれだけのパンフを、と、思いながら頂いた記憶がある。先日も店のスタッフの方が同じパンフを渡すので「日本のお客が多いですか」の質問をしてみた。

 そんな立ち話をしていると、責任者のジラルドさんが店の奥から現れ、パンフレットの謂れについて教えてくれた。

 実はパリエス好きの日本人は結構多いと言う。実際一度パリエス商品を買い、その後リピートする方がいるそうだ。「パリの店ではまだまだですが」と笑いながら話してくれた。

 パリエスの本店があるアキテーヌ地方は、ビアリッツ、サン・ジャン・ド・リューズ、など有名な避暑地が多く、更にボルドーを始めとする良港の地として知られる。世界中から豪華客船が集まり停泊、多くの観光客がこの地を訪れる。その避暑地に店を持つパリエスにも大勢の観光客が訪れるそうだ。

 時には日本のクルーズ船も訪れ、街中日本人観光客になる事もあるという。パリエスではそんな人達を対象にしたアトリエ見学も実施している。工場見学をした後は試食会もあり、その様な機会を含めて多くの日本人にパリエス商品が知られる様になった。頂いたパンフはそういった日本人客対象に作られたものだそうだ。

 店ではオンライン・ショップも実施している。店で土産用に商品を買い、その後ネットを利用して注文をするリピート客が多い。と言う事で世界を相手にマーケット展開をしており、世界中にお客が居ると言う。

 

 それにしてもジラルドさんの話は意外だった。有名避暑地とは言え、パリから遠く離れた地方都市で、日本を始め世界中にマーケットを広げる老舗お菓子店があると言う事実に驚かされる。更に、クルーズ効果がこれほどあるとは想像もしなかった。

 日本にも中国を始め東南アジアからのクルーズ客が増えていると聞く。そんなお客さんに認められるスイーツが出来、海外客向けのオンライン網を充実させれば、新しいマーケット獲得も夢ではない。話を聞きながらそんな事を想った。

 

PARIES
住所 9bis rue Saint Placide 75006 Paris
Tel   01 4544 6464
日曜 休業


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