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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.96 フレンチ・タコス O’TACOS

 日本からパリを訪れる多くの方の共通悩みと言えば物価の高さ。ホテル代と共に外食値段が気になると言われる。東京や大阪など、日本の代表的大都市との比較のようだ。場合によっては350円で昼食や弁当が食べられる日本に比べ、パリは確かに高い。一番安くあがるケバブやサンドイッチでも5.5ユーロ(740円)は取られる。

 レストランは高いのでカフェで軽くと言う人も居るが、それでも朝食セットで12〜13ユーロは普通の値段。これに何か飲物を注文すると、一番安いコーヒーでも2.5ユーロ、夏場注文が多いビールなら5ユーロになる。ビールは水代わりと認識しているフランス人は多く、朝から飲んでいる。回りも気にする様子はない。ちなみに殆どのカフェは11時頃まで朝食セットを用意しているので、旅行者は朝昼兼用の人も多い。

 「この値段でフランス人は良くやって行けますね」と尋ねられる事が多い。フランスの大きな企業は社食もあり、社員はそこで昼食をとる。社食がない企業で働く人達は近くのカフェや、安いレストラン利用者が多い。それが出来るのは会社がチケ・レストランなるクーポンを社員に与え、食事代の約半分を負担するシステムがあるからだ。

 このチケ・レストランはレストラン以外でも使える。例えばスーパーなどでも、食品に関しての支払いはこのチケットが可能、実際使っている人を良く見かける。かなり便利なシステムだ。

 レストランやカフェで働く人は店で作る賄い食で済ませる人が多い。レストランならオープン前、又は店が終わった後にレストランの客席に集まって食べている光景を良く見かける。カフェの場合、店の空いている隅の席でギャルソンが交代で食べている。厨房のスタッフはキッチンの空いた空間を利用して立ち食いが多いそうだ。

 知人の日本女性はブティックで働いているが、毎日自作の弁当を持参していると言う。残り物のご飯で作ったおにぎりや、サンドイッチが多いと言う。客のいない間を利用して店で済ませるそうだ。小さなブティック勤務の女性は同様な形でお昼を済ませる人が多い。

 

 と言う事で、今回はパリで昼食を安くあげる事の出来る店を探してみた。ファスト・フードの代表はここパリでもマクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンなど、アメリカ資本の企業が主流となっている。立地条件の良い場所を確保、広いスぺースの店を構え、大勢のスタッフを使えるこれら企業の底力はやはり侮れない。

 これらに対抗するフランスのチェーン店にQuickがある。マクドナルド同様ハンバーガーを主力に多店化、フランス市場に対応出来るよう、色々な角度から商品開発を重ねて健闘している。元々はベルギーの出発だが、フランスの企業が買収して伸ばしてきた。

 そんな業界の中で今注目されている企業がある。独自の商品を開発して健闘しているフランスのファスト・フード店だ。上記の企業と比べると未だ規模も小さいが、これから楽しめる新しい食の分野になりそうだ。そのブランドが今回紹介するO’TACOSと言う名の店である。

 

 タコスと言えばメキシコ料理の代表。トーモロコシの粉を薄く延ばしたパン状の生地に牛、豚、鶏肉やトマトなどの野菜を載せ軽く包んで頂くあの料理だ。本場の海辺に近い店では、エビやタコ、貝類などを使う所が多いと聞くが私は未だ食べた事がない。

 パリ6区、メトロ、サン・ミッシェル駅の近くにサン・タンドレ・デ・ザールと言う名の小さな広場がある。広場に面してカフェや土産店などがあるが、その一角に細い道でサン・タンドレ・デ・ザールと言う名の通りがある。広場と同じ名前で、路の両側にお土産、ピザ、ケバブ店などが軒を連ねる。何時も人で賑わう通りで、探すに解り易い。

 この通りの24番地にあるのが今回紹介する店。看板にオリジナル・フレンチ・タコスと書いてある。メキシコのタコスをフランス風にアレンジした商品で、これが結構美味しい。小さい店だが週末の夕方など行列が出来るほどの賑わいである。

 メキシコ料理のタコスとの違いは、各種肉類とフリッツ(ポテト・フライ)をトルティヤで完全に包み、表面を軽く焼いたもので、見た目はレバノン料理の一種に似ている。中にフリッツを入れる事で、従来のタコスとは全く違う味に仕上げ、新味を出した。中に包む肉は鶏、牛、羊、挽肉など、それにソースを絡ませるが、そのソースの種類ははマヨネーズ、ケチャップ、バーベキュー、アリサなど12種、好みにより何種類か選べる。トッピングにチーズ、ベーコン、キノコ、卵など14種類を揃えてあり、こちらも、それぞれの好みで注文できる。

 

 値段は4段階に分かれ、一番大きいサイズXXL(4種類の肉入り)で14ユーロ、XL(肉3種)で9ユーロ、L(肉2種)6ユーロ、M(肉1種)5ユーロ。一番小さいサイズでもお腹一杯になる事請け合いである。

 店内にイートインがあるが、客席が少なく、立ち食いをする人がいる。スタッフの話では持ち帰りが多いそうだ。我が家でも持ち帰りで、サラダなど添えて頂く事が多い。

 2007年の創業、現在サンミッシェル店の他にも、パリ市内だけで17店舗。その他フランス各地に店を構え、ニューヨーク、ロンドン、ブルッセル、モロッコ、アジアではブルネイに進出している。いま勢いに乗る新種のファスト・フード・グループだ。

 日本にはまだ店が無いという。念の為にGoogleで検索してみると、同じ名前のメキシコ料理店が新橋にある。こちらはメキシコ料理のレストランで、今回紹介したフランスの店とは関係ないようで、写真で見る限り料理の内容も別物である。

 パリで安くて美味しいもの、更に簡単に買えるものが欲しい時は、物は試し、一度この店で味わってほしい。マクドナルドやケンターキー・チキンとは一味違いのファスト・フードが味わえる。


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