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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.95 旧市街にはパティスリー専門の店がない

 ドゥブロブニクは凡そ4万8千人の人口と聞いた事があります。Googleなどの資料によりと若干の違いがありますが、上記が妥当な数字だと思えます。この数字は旧市街と近郊住民を加えたもので、城砦内(旧市街)の住民は2千人前後と地元の人に聞きました。詳しく調べた訳ではありません。

 

 旧市街は完全に観光の街です。街の機能も観光客を対象になされている事が良く解ります。地元住民の殆は旧市街の外に居住しており、市民のインフラも郊外に頼っているようです。例えば、コピー機ひとっを例に取っても、旧市街にあるのは個人の家か事務所やお役所だけと言った感じです。

 

 観光客がコピーが必要になれば、郊外に行き探すしか方法がありません。日用品の買い物は、小さなスーパーで出来ますが、レジに並ぶ客は殆ど観光客。大型店は城砦を出た郊外にあるようですが、バスかタクシーを利用、短い滞在でしたので出かける事もありませんでした。

 

 旧市街は特別許可を得た車以外は通行禁止です。タクシーの乗り入れも出来ません。と言う事で旧市街宿泊者の荷物運搬は自分で運ぶか、それを仕事にしている人に頼むしかありません。そう言う意味では真に不自由です。タクシー、バスのターミナルは旧市街の外にあります。

 

 ある朝、アパートを出て旧市街に向っていると、トレーにケーキを載せ、手押し車で運んでいる男性を見かけました。様子を見ていると、レストランに入ってデリバリーを終え、次のレストランへと向かいます。何となく気になってパティスリーを探してみました。随分歩きましたが、大通りにも路地裏にもそれらしい店は目につきません。
何回か地元の人に聞いてみましたが、無い、知らないの答え。決して不親切な応対で無い事は解ります。とあるカフェのギャルソンに聞いたところ「大通りから横道に入った所にdolce vitaと言う店がある」と言うので行って見ました。
探し当てたドルチェ・ヴィタは教えて頂いた通り小さな横道に入った所にありました。店内に小さなショーケースがあり、その中に3種類のクリーム・ケーキが並んでいます。これではパティスリーとは言えないなと思いながら、店内を見渡すと、ケースの横でおじさんがクレープを焼いています。日本風に言えば甘味処と言った感じの店です。店名のドルチェ・ヴィタはイタリア語で「甘い生活」。昔見た映画のタイトルだったので憶えていました。

 

 店内にテーブルがあり、座っている客は皆さんジェラートを頬張っています。行列が出来るほど流行っている店ですが、ケーキを買う人は一人も居ませんでした。ちなみに街のパン屋さんでもケーキ類は少ないです。

 

 ラテン系の人は男も女もスイーツ好きと良く言われます。どの国に行っても、ケーキや菓子パン、アイスクリームを立食いする光景を良く目にします。この街でもジェラート店は大繁盛、立ち食いしながら街歩きは普通の事、ひょっとしたら他の街より多いかも知れません。そんな街なのにパティスリーが全く見つからない。真に不思議です。旅に出ると色んな不思議に出会いますが、今回の不思議はこの事でした。

 

 そう言えばレストラン・メニューのデザート部門にもケーキの種類は多くて二品、別のレストランでも似たような状態です。回りを見てもデザートを楽しんでいるのはアイスか果物の類。店のウェイトレスに聞いた話では、店で作る所もあるが、大半の店は郊外の専門厨房で作ったケーキを仕入れていると言う事でした。言われて納得、ドゥブロヴニクでのスイーツ店探しは空振りに終わっと言うお話です。


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