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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.90 2016年 ガレット・ド・ロアの表彰式

 年が明けるとパリのパティスリーでは一斉にガレットが店頭に並ぶ。この事については毎年報告させて頂いて居るので、代り映えがしないと思いますが、1月のスイーツとなればガレットはやはり欠かせない。
 我が家でも夕食のデザートにガレットで新しい年を迎えた。これを食べないと何となく正月が来た感じがしない。古い話だが、子供の頃は正月は自家製の餡餅がスイーツの代表だった。今でも家々で餅を搗く風習が残っているのか解らないが、家族揃っての餅つきの後は、餡餅作りがその年最後の楽しいイベントだった。そのせいか今でも餡餅が大好きである。

   

 今年はカルトンのガレットが第一号であった。中のフェーブはデーズニー・アニメのキャラクター、モンスター・インクのサリーである。その後もスーパー、カリフールの更にジェラール・ミューロと値段も味も異なるが、食後のガレットが続いている。1月最後のガレットはサダハル・アオキの抹茶餡入り、中のフェーブは四角いショコラだった。

   

 1月5日パリ17区にある職業学校EPMTTHに2016年ガレット・ド・ロア、コンテスト作品提出現場を見に出かけた。パリ・パン菓子組合が主催するこのコンテストは年の初めを飾る製菓業界の大切なお祭り、市民もその結果を楽しみに待っている。
 場所はパリ近郊の街ルバロア市に近く、パリの中心部にない静かな佇まいが多い地区である。EPMTTHは近代的な建物で、普段は料理、観光、ホテル関係の人材を養成する専門学校である。
 午後3時特設受付でコンテスト作品提出が始まる。主催者スタッフが待つテーブルに焼きあがったガレットが次々と持ち込まれる。場馴れした人も居れば、初めての参加なのだろう、すっかり緊張した人とコンテスト会場特有の空気が会場を漂う。
 登録を終えたガレットは奥の会場に並ぶテーブルに次々と並べられていく。凡そ2時間の受付時間を経て集まったガレットは380個。これだけのガレットが一同に並ぶと壮観、見応えがある。この後審査員による審査が始まったが、この間関係者以外の立ち入りは禁止となる。
 3時の審査受付には日本代表の濱田さんも作品持参で応募した。私は知らなかったが日本でもガレット・コンテストがあり、その年優勝した方がパリのガレット・ド・ロア、コンテストに日本代表として参加しているという。
 今回は東京のブーランジェリー、ラ・テールの濱田さんが選ばれ、晴れの舞台へ挑戦した。出品したガレットはパリ4区にあるパン組合の厨房を借りて焼かれたそうだ、ちなみに日本代表には日本の協会から東京パリ間往復のチケットが贈られるという。

 6日、19時が近づくと昨日と同じ会場に続々と人が詰めかけてくる。殆どがパン菓子関係の人だが、この授賞式には一般の人の見学も認められているそうだ。
 会場の奥にはテーブルが並び、その上にガレット、シードル、コップが並べてある。パン菓子協会の主要メンバーが出揃った頃合いを見計らって、司会者が開会の挨拶を始める。
その後今大会に協賛した企業の紹介、製粉、バター、アーモンド、シードルなどなどの関係者が一同に並んで紹介されていく。

 

 このガレット・ド・ロア、コンテストは3部門に分かれて審査がされる。先ず最初にカテゴリ・アプランティと呼ばれる製菓見習い中の方達を対象にした部門の審査結果が発表された。入賞者には賞状とカップを授与される。選ばれた若者が歓声と拍手を浴びながら表彰台にあがる。賞を獲得した若者の嬉しそうな表情が爽やか、見ていて氣持ち良い。
 続いてカテゴリー・サラリエ部門、パン製菓店又は企業で働くスタッフ部門での受賞者を発表。6位から発表されて行くが、ランクが上がっていく度に会場に熱気が高まり回りも興奮状態になる。この部門の最優秀賞を獲得したのはシルヴアン・ジュベール二さんである。
 いよいよ今大会のハイライト、カテゴリー・シェフ・デントロプリーズの発表である。店又は企業の経営者が賞の対象である。
 この名誉あるコンテストの頂点に立ったのは、サラリエ部門で最優秀賞を獲得したシルヴァンさんがグランプリを獲得した。ダブルでの受賞である。受賞の大トロフィは1年間店に飾られお客の賞賛を浴びることになる。
 店がパリ郊外にあるので残念ながら今回は店の紹介が出来なかった。ちなみにシルヴァンさんは2012年の大会で5位を獲得している。
 日本代表の濱田さんは15位であった。多くの人が何回も挑戦する中、初参加で15位は見事、大健闘である。大会運営委員の方も挨拶で濱田さんのガレットを高く評価しておられた。
 授賞式が終わった会場では入場者全員にガレットとシードルが振る舞われる。会場のあちこちで入賞者を囲んでの談話や祝福が始まり、会は更に盛り上がった。
 このコンテストは、パリ市とその近郊イル・ド・フランスを対象としているが、日本からの参加が刺激となり他の国からの参加もありうるだろう。世界的規模に発展したら更に面白い大会となる。ガレット好きのひとりとして是非そうなって欲しいと思っている。

   

 1月22日からメゾン・ド・オブジェの展示会がパリの国際展示会場で開催された。年2回開催されるこの展示会の事は、ガレット・ド・ロア同様毎年報告させて頂いている。
 11月のテロ以来激減しているパリの観光客だが、3ヶ月経った今でも日本からの団体客は通年の90%減だそうだ。勢いのあった中国からの来客も大幅に減ったと言われている。日本ではビジネスでのパリ出張も控える企業が多いと聞く。今回のメゾン・ド・オブジェ展示会はそういう意味で、今後を占う重要な展示会と位置づけされていた。
 私も二日間会場に出かけて見たが、日曜に関してはビジターも結構な数であった。出展を控える企業も多いと聞いていたが、例年の8割ほどは埋まっている。週末は程々の入りだが平日はさすがに人が少なかったようだ。出展者の話しである。
 この展示会については何かの折に報告をさせて頂きたいと思っている。今回ひとつだけふれさせて頂くのは、佐賀県が有田焼き400周年という節目の年で、特設ブースを作り多くのビジターを集めていたことだ。
 もうひとつは警備の厳しさについてである。会場はパリ郊外パーク・ド・エクスポジションにある。駅の出口と会場入り口は直結しているが、改札を出て階段を上がった場所で荷物の検査をしている。軽い検査でカバンの中を見るだけだが、まずそこで最初の渋滞が始まる。ここを通過して建物中に入ると、特設検問所が設けられ、再度の荷物検査がある。今回初めての事だが、女性の警備員が多く、女性ビジターへの検査が特に厳しかった。持ち物検査は勿論、コートのボタンを、更にジャケットのボタンも外して下さいと指示、厳しいボディー・チェックをしている。これだけの警備は初めての事だ。
 明らかに女性テロリストへの対応と思われるが、その徹底ぶりには些か驚かされた。女性客には気の毒な事だが、これだけのチェックがあれば後は安心して会場を回れる訳で、面倒ではあってもとりあえず皆さん納得の体である。
 春から夏場にかけ、色んな展示会が開催されるパリである。観光客を含め、海外からの来客対応に国や市でも色々対策を練っていると聞く。市民の暮らしは何時もの状態に戻っているが、頭の何処かに一抹の不安が残るのも又事実である。一日も早い回復を願いたい。


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