Vol.57 モノプリのガレット

 新春恒例のラ・メイユール・ガレット・オゥ・ザマンドは意外な結果となった。1位から3位までを郊外の店が独占したのである。毎年パリのパン菓子組合が主催するコンクールで、パリとその近郊イル・ド・フランスのパティスリー、ブーランジェリー店が対象の催し。賞の対象は経営者、従業員、見習いなど3部門に分かれている。たまに郊外店が1位に選ばれる事はあっても、パリの店が総外れと言う事は実に珍しい。

 

 新年早々のおめでたい祭り事でもあり、毎年この稿でも選ばれた店を紹介してきた。ガレットと言えば、フランス人のお宅なら必ずと言って良いほど、新年の食卓に上がるお馴染みのお菓子である。特に公現祭の日のガレットは有名で、大人も子供にも人気がある。

 

モノプリのガレット

 我が家でも毎年年が明けるとガレットを頂く。今年最初に頂いたのはカイゼルのそれ、食後のデザートに頂いた。トラディショナルなアーモンド餡入り、パイの皮が少し厚手の仕上がりであった。公現祭には1位の店のものをと思っていたが、さすがに郊外まで足を伸ばすのは時間がかかり過ぎる。特に1位と2、3位の店はパリ市をはさみ東と西に位置していて、どちらも結構な距離である。残念ながら今年はパスする事にした。

 

モノプリのガレット

 もともとガレットと言えば一月のお菓子である。少なくとも15、6年前までは元旦が売り初めであった。こちらでも元旦は店を閉めるので、実際は2日が初売りとなる。こういうことは意外ときちんと守られていた。クリスマスのブッシュ・ド・ノエルが大晦日の夜まで店頭に並ぶ事が、それほど不思議に思えなかった時代である。いつの頃からか、クリスマスが終わると直ぐにガレットを売る店が出現。アッという間にどの店も当たり前のように元旦前に売るようになる。

 

 ムッシュ・アランはカフェ仲間だが、このように1月前から売り出すガレットを一切口にしなくなったと言う。彼に言わせると1月に食べてこそ、この菓子の美味しさが生きるのだそうだ。へそ曲がりで頑固、フランス人に良く見られるタイプだが、何となく理解出来るから不思議だ。どちらかと言えば私もガレットは1月に食べたい派である。

 

 今年食したガレットはカイゼル、ポール、カルトン何れも近所にあるお馴染み店である。毎年欠かさず頂いている。今年1位の店に行かなかったと言う事もあり、少し趣向を変えて、今まで買った事のなかったスーパーのガレットを味わう事にした。

 

 最初に買ったのがサンジェルマンのモノプリ店、ここにはパンやパン菓子、各種ケーキを並べたコーナーがある。イート・インもあり、焼きたてのパンや軽食が頂けると言う事で、買い物帰りや観光客の寛ぎ場になっている。レジに並び店オリジナルのガレットを買う。アーモンド餡入り、18cmで値段は8.90ユーロ、BIOの表記。通常の物だと、同じサイズで6.90ユーロ、32cmだと15.50ユーロである。
※BIOとはAgricultule Biologiqueのことで、オーガニック(無農薬有機農法)の事。

 

 このコーナーの入り口近くに大量生産された既製のガレット特設棚があるが、ここだと32cm11.50ユーロである。オリジナル品より3ユーロほど安い。普通のガレットの他にガレット・デ・ロア・フランジパン(店によってはガトー・デ・ロアと表記)を同じ値段で売っていた。値段だけで比較すると、何時も買う馴染みの店より随分安い。ちなみにポールで買った6人用の値段は17.60ユーロであった。ある有名店では餡の種類が違うが6人用32ユーロの値段がついていた。

 

 モノプリで買ったガレットは夕食後のデザートに頂いた。アーモンド餡の量がやや少ないが、味はまあまあいけた。日を変えて、近くのカリフールでも買う。 パイ生地が厚く、さくさくととした歯ざわりが特色、悪くない。残念なのは作ってから日にちが経ちすぎていた事、味に微妙な変化が出る。モノプリのそれより 更に1ユーロ安かった。

 

 正確に記録を残している訳ではないが、ガレットの値段が高くなった。店にもよるが、庶民の味とはどんどんかけ離れてきている感じである。アーモンドの値段が毎年上がっているとも聞かないので、この値上がり、納得しがたいものがある。美味しいガレットは食べたいが馬鹿高い値段は御免、ガレットはやはり庶民が味方のお菓子であってもらいたい。

 

 モノプリでは既成の一番大きなガレットを5枚買っている二人組みのリセエンヌがいた。どうやらパーティー用に買っている様子である。スーパーのガレットも捨てた物ではない。

 

 サンジェルマンのセーヌ通りにアルノー・ラエールの新しい店がオープンした。パリで三番目の店である。モンマルトルにある本店はこのシリーズでも紹介済み、メイユール・ウヴリエ・ドゥ・フランスの称号を持つ実力店である。

 

 白を基調にしたモダンな店内はすっきりとして清潔感がある。商品に関しては既に紹介済みなので、詳しくは省かせて頂くが、全商品別所にある厨房で作り、毎朝カミオンで運んでいる。商品構成はお菓子とショコラがほぼ半々、好評のマカロンの占める比率が結構高いそうだ。

 

 「昨年11月のオープンで未だ日が浅く、今は皆さんに店を知ってもらう事に専念している」と、店のチーフ。スタッフは現在4人で店の全てをこなしている。ケースに並べるお菓子の位置で客の反応が違い、売り上げに影響が出るそうだ。センスの見せどころ。

店には日本人スタッフでクミコさんが勤務している。てきぱきと手際よくこなす仕事ぶりも好感が持てた。日本人の客も増え続けているそうだ。
東京で開催中のサロン・ドュ・ショコラにはアルノー・ラレールも出展中との事である。サロン自体の人気も高いと聞く、これらを契機に更に知名度が上がれば日本からのお客も増える事だろう。

 

 路を挟んだ反対側に、この界隈を代表する有名パティスリー、ジェラール・ミュロの店がある。同じ並びには、ベルギー、ショコラの名門ピエール・マルコにーの店もある。何れも30mの距離、この有名店の間に割り込んだ形の新しい店、今後の展開が楽しみだ。