2020年07月22日
Vol.117 新型コロナ、通常活動の再開
2020年の革命記念日シャンゼリゼ軍事パレードが観客無しで縮小されると言う。戦車を始め、ミサイルや機工隊の行進もない様だ。私がパリに住むようになって、かれこれ45年が過ぎるが、初めての事である。
中止になった理由は新型コロナ問題。人と人の密着を避ける為の処置と言う。この軍事パレードは、フランスの国威を国内、国外にアピールする重要な行事である。
凱旋門からコンコルド迄続くシャンゼリゼ大通りを行軍するこのパレードは、パリの夏最大のお祭りでもある。毎年テレビで中継されるので、ひょっとしたら日本のニュースでご覧になった方も居られるのでは。
儀式は14日朝、大統領官邸から黒塗りの大統領乗用車が凱旋門に向かう場面から始まる。その前日、フランス各地から選ばれた兵士がパリに集まり凱旋門近くに待機。凱旋門に到着する大統領を軍とその最高指揮官が出迎える。
その後簡単なセレモリーがあり、二人はオープンカーに同乗して、ジープでのシャンゼリゼ行進が始まる。通りの両側には朝早くから大勢の市民が待機。コンコルド広場には特設観覧席が設けられ、国の各大臣、軍高官、諸外国大使などが夫人同伴で招待席に集まり、大統領を迎える。
オープンカーから降りた大統領は各軍高官、招待者と挨拶後着席。上空を空軍パトルイュ・ド・フランスが鮮やかなトリコロール・ラインを引きながら飛行すると、全軍挙げてのパレード開始である。
今年、軍事パレードを縮小した政府は、その代わりにコンコルド広場で医療関係者を称えるイベントを開催すると発表した。イベントの内容、規模については未発表である。
6月28日、フランスでは統一地方選が行われた。結果は与党、共和党前進が主要都市部で敗北。大統領の新型コロナや雇用問題対応への不満などが選挙結果に現れた事になる。
フランスの主要都市部では環境派、ヴェールが躍進した。リオン、ボルドー、マルセイユ、ストラスブールで環境派市長が誕生。パリでも社会党のアンヌ・イダルゴさんが再選された。
7月3日、フィリップ首相内閣が総辞職、マクロン大統領はこれを受理して新しい内閣を組閣中。8日頃には新内閣の発表が行われると報じられている。新しい内閣には環境派及び女性閣僚が数多く登用されるだろうとの予測もある。
新しい内閣発足後、フランス今後の方向性が決められが、従来の政治に新たな変化を起こしながら、未来へと前進する事を期待しているところである。
5日新しい首相にカステックス氏が決まった。政界でも無名の方と言われている。前首相と同じく官僚出身との事、テレビで見る限り温和な方に見える。今後どの様な組閣がされるか楽しみである。
7月4日土曜日から夏のグランド・バカンスが始まった。先の大統領声明で「2020年の夏はこれまでの夏とは異なる」と警鐘、コロナウイルスは今も残っていると市民に呼び掛けたのだ。
何はともあれ夏はバカンスのフランス国民の意識である。この時期、心は既にバカンス先にあると言っても過言ではない。6月15日の旅行制限が解けた段階で避暑地へと向かう人達もいた。
避暑地でもコロナ対策を進める各種施設が多い。対策の内容は殆どの国と同様、人と人同士の距離、徹底した消毒、入場人数の制限などなど、昨年迄の対応とはあらゆる面で違いがある。
これまでの夏とは異なると言われたこの夏、バカンスでも大きな変化がみられる。その一番は海外でのバカンスを過ごす人が大幅に減少、国内での休暇を選ぶ人が増えている事である。
EUは7月1日、14カ国からの渡航制限を解除した。これには日本や中国も含まれている。「コロナを押さえながらも、観光客が欲しい」難しい選択だが各国の本音はこう言ったところだろう。
今夏、バカンス先で最も注目されているのはポルトガルと言われる。物価が安く、コロナ感染者がEU圏では少ないと言う背景があり、ホテルの予約が他国に比べ多いそうだ。
だが、ここに来てポルトガルでの感染者が増え続けていると言う。リスボン閉鎖の噂もある。
夏の長期バカンスはヨーロッパ人にとって、体と意識に組み込まれたひとつの文化。簡単に変わる事はなさそうだ。3か月以上自宅待機を強いられた市民、解除後家から外への意識が高まる皆さんだろう。
フランスの革命記念日は7月14日。パリではエッフェル塔での花火が開催される。コロナ問題で例年に比べ控えめな演出になるだろうの声も聞こえてくる。ここモントローでも、11日から各種イベントが開催される。
市の広報によると、旧市街の広場や公園でコンサート、馬術、歴史村再現などなどのイベントが行われる。14日の夜は恒例の花火大会も開催される。
ここ数回、フランスを始めヨーロッパ各国の社会事情をお伝えしている。その殆どは新型コロナ関連の出来事を柱にそれに関する話であった。お菓子業界の話題と異なる事柄が多く、些か気がかりの思いもある。今迄のフランス事情とは異なる現状をお知らせする事も必要との思いでレポートした。
そんな中でもやはり気になる製菓業界の今のあり様である。出来るだけ多くの情報を集めて、お届けできたらと思っている。
モントロー・旧市街には現在6店舗のブーランジェリー、パティスリーがあると言われている。人口凡そ1万足らずの旧市街で、この数が多いか、少ないかは解らないが、ある程度のバランスは保っていると思われる。
その他ルクレールとカルフールの大手スーパー・マーケットがあり、そこには広いスペースを取ったパン、ケーキのコーナーがある。このコーナーに付いては、この稿で既に紹介した。
いずれも大量生産しての商品群、パン、ケーキ類、夫々の単価も驚くほど安い。日によってはバケット6本が4ユーロ少々で買えるので、車のある人はここで纏め買いをする人が多い。
我が家でもクロワッサンとパン・オゥ・ショコラの纏め買いをするが、日が経つと味が落ちるので、最近は近場のブーランジェリーで焼き立てを買う事が多い。
先日、モントローの街外れにある生鮮スーパー・マーケット、GRAND FRAISに初めて出かけた。このスーパーの存在は知っていたが、ルクレールに行く途中にある為、何時か行って見たいと思いながら、毎回素通りをしていた。
知らないと損をするの例えがあるが、グラン・フレに関してはこのことわざ通り。今迄行かなかった事が悔やまれた。広い建物一杯に生鮮食品が溢れている。
肉、ハム・ソーセージなどの加工品、野菜、果物、魚類、チーズ、バター、エピスリー、等がコーナー毎に数多く揃っている。しかもスーパーより廉価。見事な品揃えである。
一番の収穫は豆腐を見つけた事。中国企業の製品だが作ってからさほど日が経っていない。今迄、豆腐が欲しくなるとパリまで出かけていたが、この事が解消された訳で、これは実に有難い。
このスーパー、フランス国内に200店舗以上を所有する、人気の食品専門の企業であるらしい。後日改めて買い物に出かけたが、大ぶりのシジミが入ったパックが5ユーロだった。酒蒸しにして頂いた事は言うまでもない。
同じ建物の入り口横にMarie Blachere の看板を掲げたブーランジェリー、パティスリーがある。広い店内でスタッフの方達が忙しそうに働いていた。
来たついでに撮影許可をお願いしてみる。店の奥から女性マネージャーが現れて「申し訳ありませんが本部の許可が必要です」との事。丁寧に断られた。ホームページのアドレスを書いたメモを頂いたので、帰宅後検索。
私は知らなかったがこのマリー・ブラシェール、フランス、ベルギーでフランチイズを展開する大手のブランジェリー、パティスリー。現在500以上の店舗を擁するとある。本部は南仏、サロン・ド・プロヴァンスにあるようだ。
この日は店内に入り、マネージャーとの簡単な立ち話で終わったので、折を見てもう一度訪れて見たいと思っている。
このグラン・フレ、これからもお世話になる事間違いない。もっと早く来るべきだったと思っている。
COSTCOのブーランジェリー、パティスリー
会員制倉庫型スーパー、コスタコが日本で20店舗以上あると言う話は聞いていた。会員制で、高品質商品を大量購入でき、しかも単価も安いという。
実はパリ郊外にもコスタコがあり、会員が増え続けていると言うので、見物がてら出かけてみた。モントローからは車で凡そ1時間の距離にある。
パリへと向かう何時ものルートをひた走り、緑一色に包まれたフォンテンブローの森を抜けると、見慣れた広大な畑が続く。先回走った時は風に揺れる穂を付けた一面緑の麦畑であったが、収穫を終えた今は黄土色の大地と化している。
オートルートA5 からベルサイユ方向へと車線を変更、暫く走ると目的地に到着した。目の前に東京ドームが丸々入る様な巨大な倉庫型建物が現れる。
入り口近くにあるカウンターで会員登録の手続きをする。個人会員費36ユーロを支払い会員カードを貰う。本人及び同伴者も入館できる事に。一端外に出て、コントロールを受け入館。
館内はまさに倉庫と言った感じである。箱積された商品が山積みになり、整然と並べてある。入り口近くにはブリジストン、ミュシュランなどの各種タイヤが。更に家庭用品、電化商品が並ぶ。
奥に行くにつれ、衣類、寝具、アウトドア商品、酒類、飲料とブロック毎に商品が積み上げられてある。その間をトレイを押すお客が行き来する。菓子類のコーナーは箱に詰まったままで大量に陳列されていた。ところどころに箱を開封し、手で取り易い様にしてあるのはサービスの一環か、それとも客が勝手に開封したのか。
実を云うと、これだけの商品が揃っているとは思いもしなかった。想像以上の量と品揃えである。今回は会員登録と見物の目的が大半だったが、歩いている内に見物の思いが些か面倒となる。
膝に故障を抱えているので、インテリア・コーナーで展示用の椅子に掛けて暫く休憩。係りのスタッフに注意されるかと思ったが、何事もなく通り過ぎて行く。暫くすると同じように休憩する人が現れて腰を下ろした。
こう言う販売スタイルがアメリカ式と言うのか解らないが、何とも味気ない店内展示方である。美しく展示して販売すると言う意識は端から感じられない。合理的に並べる、積み上げると言ったスタイルだ。とは言え、要所要所に見やすく、取り易い配慮がしてあることに別な意味で感心した。
小休止の後は、食品コ―ナを見ることにする。先ずワイン・コーナーを覗く、結構広いスぺースを取ってあり、フランス・ワインを中心にお手頃の値段物が並ぶ。そんな中にvin de paille 2015がある。フランス北部ジュラ地方の白ワインだが、フォアグラによく合うワインと言われている。普段買うワインは高くても10ユーロ位だが、この銘柄で一本25ユーロはお買い得だと思った。
もうひとつは、Margaux2010が1本60ユーロ、こちらはボルドーの赤ワイン。お金があったらと思いながら見るだけに止めた。特別の事でもない限りこの値段は手が出ない。ここのワインコーナーは結構人気の様で、箱買いをする人も多い。
酒類コーナーでビールを買う。24本入りパックが18ユーロと超お買い得だそうだ。銘柄はバドワザー、チェコ産のビールである。このビールはアメリカで人気、その事は皆さんご存知だと思う。後で飲んでみたが結構ドライで、ビール特有の苦みが美味かった。
続いて野菜、果物コ―ナを覗いて見る。入り口にスイカが山積みになっている。他のスーパーと異なる対応は、大きな冷蔵室があり、そこで鮮度を保つよう上手く保存をしている事。中に入るとTシャツ1枚では震えるほどの寒さだった。ここで今が旬のサクランボをひとパック購入、市場より廉価だ。
各種肉類が並ぶコーナーも興味をそそる。とにかくどの種類の肉も安いのだ。大きく切り分けた肉の塊がケース一杯に並べてある。ステーキ用に切った肉も1枚1枚が厚く、映画で見るアメリカ人が食べるステーキの場面を連想した。
生肉、加工肉共に種類が多い。豚のリブ、スペイン風に味付けした塊を買い、帰宅後オーブンに入れ焼いてみたが、出来上がりは申し分ない。肉も柔らかくジューシー、美味に焼き上がった。お買特商品である。
パン・ケーキのコーナーも一見の価値があつた。建物一番奥のコーナーだが、大型の機械が揃った厨房で男女スタッフが忙しそうに働いている。その現場は売り場から直接見える様になっている。
ここでもパッケージはプラスチック容器が主流。ひとつひとつを袋に入れて、又は箱に入れて販売する巷のブランジェリーやパティスリーとは基本的に異なる売り方だ。スーパーによってはパッケージに詰て売る方法と、1個1個と個別に売る両方をとる所があるが、コスタコではパッケージ売りが殆どだった。
味と形の大きさを知るためにクロワッサンを買う、プラスチック容器に12個入って4、99ユーロ。1個の大きさもルクレールのそれより大きい。パン・オ・ショコラなども同様のスタイルで売られている。
商品表示にKIRKLANDとある。この会社アメリカが本社だが、フランスにも工場があるようだ。只、ここで売られる商品は建物内の厨房で作られているそうだ。商品はビオの小麦粉を使っているとの事である。
ケーキ類も同じスタイルの販売、売れ筋を限定しているのか、ケーキの種類は驚くほど少なかった。このスタイルが日本でも同様なら、客の反応は如何だろう。
フランスと日本を比較するにはこの事は重要な要素になりそうだ。主力商品はどう言った物か、又それらの値段の違いは、ここら辺が参考になればと思っている。
個人客より、ビジネス関連の客が多いと思っていたが、平日の午後と言う事もあるのか老若カップルや家族連れが多い。流石にコスタコと思ったのは、恐らくアメリカ人だろう英語で会話をする客が多い事だった。
殆どの客がカート一杯に商品を積んでいる。そんな中でワイン1本、ピザをひと箱の客も見かけた。
レジで支払いを済ませ、小腹が空いたので、飲食コーナーでフィッシュ&チップスを注文する。山盛りのフライドポテトに揚げたての魚のフライが乗って、中々の美味だ。飲物はペプシを、80サンチームでコーヒー1杯より安い。
買い物終了後のおさらいだが、ここはやはり大量購入をする人向けの店、と言う事だった。息子はリーバイス501のジーンズを買ったようで、パリの店より安いとの事。これだけで会員費の元を取ったそうだ。