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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.113 農業博のBIOコーナーを見学

 危機一発で間に合った。恐らく全ての関係者が胸をなでおろしている事だろう。2020年サロン・インターナショナル・ドゥ・ラグリクルチュール(農業博)は2月22日から3月1日迄、パリ、ポート・ド・ヴェルサイユの国際展示会場で開催された。

 フランス農畜産業従事者の祭典。開催期間9日間、フランス中のお百姓さんがパリに集まるお祭りである。今回も大盛況であった。フランス全土から各地の名産品が集まった会場には、地域毎のブースが出来て、そこを舞台にその地域お百姓さんが集まって来る。

 集まった皆さんは地産のワインやビールを飲みながら、これまた地域物産を肴に飲めや歌えのお祭り騒ぎ楽しむ。老若男女、子供連れも居れば、校外授業の農業学校、小中学校のグループも大勢参加。更に一般ヴィジターも参加して、会場内は歩行も困難なほどの大賑わいとなる。

 この農業博については、このレポートで今までも何回か紹介している。パリで開催される各種イヴェントの中でも最大級のもの、その歴史も長い。ある意味国を挙げての行事と言われている。

 開催中、数あるイベントの中で注目を浴びるのは、フランス全土から集まる家畜、特に牛のコンクールである。畜産農家ではこのコンクールに選ばれるため、日々研鑽を重ねて牛を飼育するという。同様に馬のコンクールも行われる。開催日前の準備、開催後後始末には更に曜日を重ねる訳で従事者の苦労は並大抵ではない。

 さらに注目されるのが、各物産毎に選び授与されるメダル。例えばワインやチーズなど、審査で選ばれた最高の製品は1年間金メダルのシールを貼ることが許可される。これは商品の販促に非常に有効で、「パリ農業コンクールで金賞受賞」は数あるコンクール受賞品の中でもトップに位置される。

 

 3月1日、今年も無事にサロンが終了した。この日を境に、フランス国営テレビが一斉に新型コロナウイルス問題を報じるようになる。その前にもフランスでの感染者やコロナ病が原因で死者(中国系の旅行者だが)が出たというニュースが報じられていたが、比較的大人しい報道ぶりだった。

 新型コロナ問題と言っても、中国人観光客減で物が売れない、ホテルやレストラン、お土産、免税店などの客減少など経済的な面にスポットが当てられた感があった。

 ところが3月2日からの報道は、フランスでの患者発生、その対応など政府を挙げての対処を毎日報じるようになる。3月3日、感染者数21名であったのが7日の報道では400名以上となる。更に9日には1300人を超える状態となっている。

 国内感染者の分布もフランス全土に広がりつつある。特にイタリアに近い南部地域、ドイツに隣接するアルザス地方の感染者が多いと発表。先日、フランス・サッカー連盟はパリ・サンジェルマンとストラスブールの試合、ストラスブール市での開催を中止した。

 穿った見方をすると、農業博が終わるのを待って政府が新型コロナ問題を発表したのでは、とも取れる急激な感染者の増えぶりである。これから益々増えて行くだろう。政府や地方行政の早急な対応を見守っているところだ。

 

 2月20頃、原因は解らないがアキレス腱を痛めた。切れてはいないが、歩行に支障をきたしている。そんな事で今年の農業博行は中止にしようかと思ったりしていた。とは言えやはり気になる。

 気になる原因はこのサロンで行われるBIO関連のコーナーを見たいと思っていたからである。ご存じの事と思うが、フランスのBIO成長率は相変わらず上昇し続けている。ある資料によると、日本のBIO(有機)食品市場は1850億円に対して、フランスのそれは5400億円(2013年)、2018年には1兆1640億円と成長している。

 フランスでBIO商品がこれだけ購入使用される理由は、まず自分と家族の健康の為、更に地球環境への配慮と言われる。パリを例に取ってもBIO商品を扱う店は増え続け、スーパーマーケットのBIOコーナーは益々充実し続けている。

 政府も現状の農業形態からの脱却を目指す方向へと舵を切り替えているようだ。有機農業転換促進に11億ユーロの財政支援を行い、2025年頃までに農薬使用の半減目標を目指すと発表したという。とは言え農薬使用の農家が未だ多いのも事実である。

 

 2月28日のパリは冷雨に包まれた一日だったが、ポート・ド・ヴェルサイユのサロン会場は大勢の人で賑わっていた。7カ所に分かれているが、一番の賑わいはやはりフランス全土から集められた地方物産展会場。ここではフランスの地方料理を提供する特設レストランが並び、それぞれの地方の名物料理が食べられる。

 アルザス地方ならシュクルートにビール、ブルゴーニュ地方ならブルギニヨンに赤ワイン、ノルマンディー、ブルターニュ地方は新鮮な海鮮料理に白ワインとお馴染みの料理が堪能できる。どのレストランも満席、昼時は待ち人の列が出来る。

 その他にも地方毎のコーナー、スタンドが出来、そこで地方物産や地方料理が売られている。立ち食い立ち飲みをする人が多く、歩行も儘ならない程の賑わいとなる。

 

 今回はBIOコーナーを限定に見物、見学をする事にした。BIOコーナーは毎年2号館で開催される。物産会場に比べるとさほど広くは無いが、それなりの会場に。その中に農業種目別にコーナーが出来ている。

 入り口近くに在る応接間風に設えたコーナーがBIO専用のオフィス。中で選任スタッフがコンサルタントとして、各種相談に応じていた。ここではBIOに関する各種講演なども行われている。

 珍しいところでは、BIO栽培にによる生花のコーナーが先ず目につく。私が訪れた時には、BIO生花によるフラワー・アレンジメントの指導実演中だった。

 農薬を使わずに育てた花は日持ちが良いそうだ。花愛好家の間でも注目されていると言う。ここにはコンクールで入選したブーケなども飾ってある。今迄余り関心が無かっただけに、こう言う分野にまでBIO商品が広がっている事は、新鮮な驚きだった。

 隣のコーナーにはBIOブドウの鉢植えが並んでいる。こちらも専門のコンサルタントが居て、相談に応じている。その横にジャガイモの鉢植えが並び、品種別に展示してあった。

 場所を移すと大勢の学童が集まり校外授業の最中であった。有機トウモロコシや小麦の生産過程を指導員が教えている。覗いての立ち聞き、短い時間であったが、トーモロコシの遺伝子組み換え栽培による、社会環境、人体への影響を熱心に教えていた。

 遺伝子組み換え栽培に対しては様々な意見があるようだが、私の見方では若手農業従事者の間では、遺伝子組み換えに対して反対の立場をとっている農家が多い様に見える。

 その他、狂牛病や豚コレラの実態を映像で放映、農、畜産業将来に対しての警鐘を鳴らしている。何れにしろ子供の時から農業、中でも有機栽培農業の大切さを教える、このような場があると言うのは大切な事だと思われる。

 会場を巡りながら、BIOリンゴを試食した。フランスで頂くリンゴは日本のそれに比べ甘みが足らず、酸味が強いと言うのが今迄の認識。今回つまみ食いしたリンゴはその認識を見事に覆す程の甘み、美味しさだった。

 BIO農業促進はフランスの地域振興にも役立っているという。2018年の1年間で約1万9千人の新規雇用がなされたそうだ。

 オート・ガロンヌ県はフランス南西部に位置するが、農業特に小麦や向日葵などの産地として知られる。果物の収穫も盛んな地である。この県のBIO共同体では有機農産物の管理、加工、流通の一元化プロジェクトが進行して業績を向上させている。今後のBIO 農家のモデルになっているそうだ。

 

 先日、パティスリーの勉強でフランスにやって来たという、若い日本の方とお茶を一緒する機会があった。来て間が無いので、今はひたすらパリの街巡りをしていると言う。主に食関連の店回りを心掛けているとの事。何でも新鮮に映る様で、若さとその好奇心が羨ましくも思える。

 そんな中で気になりだしたのがBIOと言う文字や看板の多さだそうだ。「スーパーに行ってもパン屋に入ってもこの文字があるので驚きました」と。BIOの言葉は知っていたとの事だが、日本では余り意識しなかったそうだ。

 日曜日にラスパイユのBIO市場にも出かけたそうで、人の多さと扱う業種の多いのに驚き感心したと言う。折角のパリ、日本では経験できない事を数多く体験される事を願っているところである。

 それにしても気になる新型コロナウイルス問題の行方だ。フランスの大臣が感染、他の政治家にも感染者が出たと言う。お隣のイタリアでは9日、首相がイタリア全土を封鎖すると宣言したという。国内での移動も制限するよう国民に訴えているそうだ。


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