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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.111 混迷するパリのクリスマス前哨戦

 

 11月24日夜、パリ市長立ち合いの元に、シャンゼリゼ大通りのイルミネーション点灯式が開催された。今年は例年より派手目な赤いランプを使用している。市民の反応も悪くない様で「大通りがより華やかになった」と言う声が多い。
 無事に点灯式となったが、実は今年の大通りイルミネーションは中止、と言う噂が市民の間で囁かれていた。結果は単なる噂であった様に、今美しい夜景を展開している。
 噂の元になったのは、長期化するジレ・ジョンヌのデモである。毎週土曜日行われるデモだが、特にシャンゼリゼ大通りを拠点にパリの各所で行われている。
 11月のとある土曜日、ジレ・ジョンヌ、デモは大荒れとなった。大通りに建ち並ぶブティックや銀行、カフェ、レストランが一部過激集団によって破壊、損失の被害にあった。キオクスや乗用車も焼失、メトロ駅も封鎖された。この騒ぎはシャンゼリゼ大通りに留まらず、イタリア広場でも大荒れとなった。

 ジレ・ジョンヌのデモが行われるようになった元々の動機は、ガソリンの値上げに発している。車社会となったフランス国内、特に地方部では車無しでは生活が機能しないシステムが出来上がってしまった。それに至る要因は色々あり一言では説明できないが、日本の現状に照らしても、この事態はご理解頂けると思う。
 都市に比べ低収入者が多い地方で、このガソリン値上げは直接生活に打撃を受けると、市民が抗議の旗揚げをした。この抗議運動は燎原の炎のように各地に広がる。同じように都市部でも賛同者が現れ、結果毎土曜日のデモとなり、現在も継続している。
 ジレ・ジョンヌ運動に賛同する市民は多い。反面一部跳ね上がりグループの過激な行動を批判する勢力も増えている。デモの影響は市民生活に直接波及している。更に商店街のデモ時の閉鎖作業など、その防衛対策に掛かる費用も馬鹿にならない。
 シャンゼリゼ大通りのデモで被害の大きのは、通りに面した建物群だが、意外と報道されないのが大通りから横道へと続く通りの各種中小企業や商店街の被害。普段は比較的静かな通りが、デモ時はデモ隊と警官の攻防で大荒れになる。
 シャンゼリゼ大通りに店舗を構える商店は殆どがインターナショナル・ブランド。被害にあっても翌日は修復出来る余裕があるが、一方の横道商店街は個人企業が多い。予防、修復に掛かる経費も簡単には捻出できない。
 こういう状況の中で、年末にかけて更に混乱すると予測。シャンゼリゼ大通りのイルミネーションは不要と言う人達の声が巷に流れても不思議ではない。結果は単なる噂で終わった。点灯式は無事に行われ、大通り並木にランプが灯り、道行く人々の目を楽しませている。

 12月に入っても混乱は続いている。11月中半から12月にかけてパリで起こったデモを思い付くまま拾ってみる。先ずイスラム教徒によるイスラム差別に反対するデモ、女性に対するあらゆる暴力から女性を守るデモ、恒例化した土曜日のジレ・ジョンヌ、デモ。更に農業従事者によるパリ環状線をトラクター千台で封鎖する抗議デモなど大勢の人が参加した。その間にも殆ど毎日各種デモが続いている。
 5日からはSNCF(フランス国鉄)を中心とする交通ストが始まった。此れには各界労組も参加してフランス国内挙げてのゼネスト状態となっている。4日、パリの日本大使館から今回のデモに関する通達が届いた。日本でどの程度、今回のスト・デモの事が報じられているのか解らないので、その通達内容の一部を紹介してみたい。
 以下がその内容である。
 警察,消防,病院などの公共機関もストライキを実施する旨報じられています。主な実施機関は以下のとおりとされていますが,今後,参加を表明する労働組合が増える可能性もありますので,十分注意してください。
(1)警察:12月5日10時~15時まで2つの労働組合がストライキを実施予定。同時間帯は調書作成などが実施されない可能性がある。また,空港及び高速道路における通行コントロールの放棄を表明している。但し,緊急事態対応を除く。
(2)消防:6月からストライキを実施中。但し,緊急事態対応を除く。
(3)病院:3月から緊急医療サービスでストライキが実施されており,今回,更に2つの労働組合がストライキ参加を呼びかけている。一部の公立病院で影響が出る可能性がある。
(4)役所:県庁や市役所などの公共サービスに所属する労働組合が12月5日(木)から1月5日(日)までストライキの実施を呼びかけている。行政手続に支障をきたす可能性がある。
(5)郵便局:郵便物の配達や郵便局への登録に影響がおよぶ可能性がある。
(6)電力会社(EDF):3つの労働組合が参加を表明。一部の公共機関への電力供給を停止する可能性がある。但し,個人宅への電力供給は維持される。
(7)教育機関:フランス全土にまたがる3つの労働組合が参加を表明し,その他の労働組合も参加予定。多数の公立学校が一時閉鎖等の影響を受ける可能性がある。
(8)運送業:2つの労働組合が12月5日から無期限ストライキを表明。トラックなどの運送業者がストライキを実施することにより物流に影響を与える可能性がある。
 当初5日から3日間の交通スト予定と言われていたが、ここに来て無期延期と報じるメディアもある。暫くはパリを始めフランス全土で混乱状態が続きそうだ。今回ストの主要因は政府の年金改革に対して反対する労組、市民の対応である。意外と思われるかも知れないが、混乱の中でも市民は冷静に対応している。理由は年金改革に反対する人が多いと言う事だろう。日によっては、パリの公立学校全校が休校状態となっている。
 1995年、フランスでは同じように年金改革に反対するゼネ・ストが3週間続いた。このストで当時の首相が退陣している。
 
 この様に混乱状態のパリをはじめとするフランス各地だが、巷ではクリスマス商戦の真っ最中でもある。テレビのCFは殆どクリスマス・プレゼント商品一色となっている。
 交通ストが始まる前に、パリのクリスマス商戦を一目見ておこうと街歩きをしてみた。
 この時期になるとパリの各所でクリスマス市が開催される。今年一番の話題はチュイルリー公園で開催中のクリスマス市である。ルーヴル美術館正面からコンコルド広場までと続く公園。例年この時期はここで移動遊園地が開催される。
 今年は同じ場所でクリスマス市を含む遊園地となった。パリ市のどのクリスマス市より大規模、更に豪華。色々ある遊戯施設の中にはアイス・リングも登場していた。そのリンクでは親子が楽しそうに滑っている。
 出展企業も多岐に広がり、盛り上がり要素も充分である。クリスマス市に付き物のヴァン・ショーから始まり、各種プレゼント用小物、ショコラ、ゴーフル、ワイン、シャンパン、各地の物産などなど、見ているだけでも楽しくなる。
 入場者は市民も多いが、各国からの観光客と思える人達が大勢訪れている。チュイルリー公園はパリ市のほぼ中心地、例えデモやストで交通機関がマヒしても、歩きで訪れる事の出来る地理的好条件の場である。ちなみに入場無料であった。
 ブラブラとクリスマス市を楽しんだ後は街歩きを続ける。先ずカステリオーヌ通りに出てサントノーレ通りを目指す。この通りにはホテル・ル・ムーリスのパティスリー部門のブティックがあり、通りから厨房の様子が見える。ガラス張りの店内にはアラブ系の方が買い物中であった。ここは何時見てもお金持ちと言った方達が多い。
 ここからラデュレ迄はほんの数メートルの距離。クリスマス・デコレーションも完成していたが、残念なのはショーウインドーの半分がデモへの対応か板張りがしてあった。相変わらず大勢の客である。品の良い店の飾りも、マカロンと高級感のあるパッケージ中心。その構成力は流石と言える。
 その後サントノーレ通りを少し歩き、ヴァンドーム広場へと向かう。ここのクリスマス飾りは有名。広場の回りにはインターナショナル超高級宝飾店が集まり、毎年それぞれに豪華なディスプレーを披露する。今年も期待に違わず見せ場を作っていた。それも見るための宝飾ファンが集まるとも言われている。

 クリスマス飾りと言えば、やはりギャラリー・ラファイエットやプランタンの両デパート。今年はプランタンが先陣を切った。デモの所為か何時もの年に比べ見学者が少ないのが残念。楽しみに待っていたであろう子供達には真に気の毒な年末スト、デモ騒動である。
 その後ラファイエット食品館に行って見る。一番盛り上がるのはクリスマス当日とその前の1週間。それでも出店している有名パティスリーやショコラティエのコーナーは準備が出来上がっていた。ここでも観光客と思える人達が買い物籠に次々と商品を入れてレジに向かって居る。ちなみに購入品を覗いて見るとショコラが圧倒的に多い。やはりショコラ人気は不動のようだ。
 再びサントノーレ通り、オペラ通りを歩き、95番のバスでサンジェルマン界隈のスイーツ店を見る。何とこのバスが30分の遅れ、既にストの影響が出ている。明日からが思いやられる交通事情である。
 パトリック・ロジェー、シャポン、ジェラール・ミュロ、アルノー・ラレール、マカロン・グールマンなどを見る。この様な有名どころのショーケースは、既にクリスマス満艦飾、流石と言える。
 
 今年一番気になった事は、クリスマス・デコレーションに掛ける企業間の格差、平たく言えば高級ブティックと普通の店の余りの違いである。高級ブランド店は益々豪華になり、普通の店は未だ飾りもしてない所が多い。これはあらゆる業種に共通する事、製菓業界も同様である。
 うがった見方かも知れないが、こういう現状が市民の不満に拍車をかけてデモ、ストが多発する要因のひとつと言えるかも知れない。フランスも深刻な格差社会になっている。

 まともなレポートが出来ず申し訳ありませんが、フランス特にパリの現状を知れば今年の年末、クリスマス前の混乱状態がご理解いただけると思う。このままでは今年のクリスマス商戦は間違いなく低調となるだろう。
 10日もほぼゼネスト状態、解決の兆しも見えてこない。塵関連の労組もストを継続すると言う。これから道路に塵の山が出現するのは間違いない。悪臭に塗れるパリの街を訪れる観光客は真に気の毒である。一日も早い解決を願うしかない年末のパリである。


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