2012年10月31日
Vol.53 カンティーヌ・カリフォルニア
秋が駆け足でやって来た。空の色も雲の形も秋そのものである。ひと色厚みが加わったパリの街。気がついたら街角に焼き栗売りのドラム缶が立っている。月日の経つのが本当に早い。
今年もメゾン&オブジェのサロンに出かけてみた。夏のバカンス明け最初の大型展示会である。相変わらずの盛況、と言うよりこのてのサロンでは現在ヨーロッパ第一の規模となった。
ビジターは全ヨーロッパから、更に中東、アジアからも多数の参加である。出展企業は全世界から、世界中の人と物が一堂に集まった感である。
プレス・ルームに行き資料をもらう。ついでに場内撮影の許可証もお願いする。これ無しでカメラを向けると出展者から必ず注意を受ける。各ブースに撮影禁止のマークが張ってあるが、無視して写真を撮る人も多い。何しろ各社が精魂込めて作り上げた作品の数々だけに、コピーは駄目というのが出展者側の言い分、結構厳しい。
出展企業約3000社、ビジター数約85000人。今回の入場料は60ユーロである。出展企業のメインはヨーロッパだが、今回も日本からの出展があった。
毎回ジェトロが中心になり日本商品の紹介を続けている。そのお陰で各国バイヤーに認知されるようになった。毎回出展している日本企業も増えている。継続は力と言ったところだろうか。
今回は韓国、台湾、タイが特別ブースを用意して出展した。ヨーロッパ企業に比べ出展数、物の規模はやや物足りない感もあるが、費用、労力を計算すれば、これは仕方の無い事だろう。陸路自由に物を運べる国と海や空を渡っての違いは如何ともしがたい。見た目に小物が多いのはそんな事情があるからだろう。それでも多くのビジターを集めていた。
インテリアに関する全ての物がある。その他衣類、食品の出展も毎回増えている。こういうサロンを回っていると、人々の暮らしの明日が何となく見えてくる。毎回足を運ぶのはそんな理由があるからだ。駆け足状態で会場回りをしながら、気づいた事を紹介したい。
相変わらず多くのバイヤーを集めているのが、クリスマス商品を扱うコーナーである。特に北欧、ドイツ、イギリスなどの企業が目立ち、扱う商品の数、ブースのスペースも他を圧した感がある。ディスプレー、プレゼント用などクリスマスに必要な物は全てが揃っている。共通しているのは赤を初めとする暖色系のカラーを使った商品の数々、特にテーブル回りにこの傾向の色合いが多い。
香りもインテリアの主要部門を担うようになった。特にブージ(ろうそく)は各メーカが競って種類を増やしている。フルーツ、ハーブ、花とあらゆる香りを楽しめる。更に形や器のデザインにも力を注ぎ、付加価値を高めている。
一般家庭用のインテリアでは、人工的で硬質なデザインより自然でソフトな感覚の物が目に付く。家具類も木製、籐、葦などを使ったものが増えた。カーテン、クッション、テーブル・クロスなどは綿、麻製の物が多い。形はシンプルでも素材は結構凝った物を使う。新しい流れである。
食品関連では、お茶メーカーが多数参入している。お茶ブームと言えるほど。紅茶、緑茶、ハーブなど産地、種類も多岐に渡っている。中国、インド、スリランカなどの産地物が多いが、日本産を扱っている所も結構ある。アフリカ産が多いのは、ちょっと意外だった。ハーブは地中海沿岸で採れたものが多い。
今サロンで一番変わったのは、入場券が自動販売機で買える様になったこと。昨シーズンまでは入口前にスタンドを設け、そこに若い女性スタッフが並んで対応してくれた。人件費削減の一環だろうが、何となく物足りない。見た目の華やかさも無い。同じことを話しているバイヤーが居た。
他にも色々目に付くこと多かったがページの都合あり、次回のサロン報告に回したいと思う。
パリで一番美味しいと評判のハンバーガーがあると言うので、見学がてら試食に出かけてみた。店の名前をカンティーヌ・カリフォルニアという。店と言うより実はキッチンを備えた移動販売車で、毎週ラスパイユの市場とマルシェ・サントノーレの市場で昼食時間帯だけ営業をしている。
火曜日の11時45分、ラスパイユの市場に行くと、道端に泊めたキャミオンの中でスタッフが準備中。車の前に2卓の丸テーブルが用意され、立てかけ黒板にメニューが書いてある。既にお客が待っていた。今日の第一号は、香港から来たという観光客の男性。人気の話を聞いて一度食べてみたかったと言う。
12時オーナーのジョーダン・フィルダーズさんがノート片手に注文を受け始める。お客の名前と品名を記入。思ったより若いオーナーである。注文名を英語でスタッフに指示。スタッフは女性一人に若い男性3人、何れも英語圏の人達である。オーダーを受けてから作ると言うのがこの店の流儀だそうだ。
次の客は近くの大学に通うと言う学生が3人、テーブル脇で雑談しながらハンバーガー待ち。続いて若い女性が、こちらはオーダーをして後で取りに来ると言う。このての客が結構多い。その後も次々とお客が続く。中にはアメリカからと言う観光客の夫婦も居た。
注文しておいたハンバーが出来あがる。こんがりと焼きあがったバンズに肉厚のハンバーグが。数ある既存店のそれと比べ、見た目だけでも美味しいと解る。香りも良い。使われる材料は全てBIO素材、肉も野菜もそれぞれ特約農家から送られた新鮮なものである。セットになるフリツ(ポテト・フライ)も全てが手作りである。冷凍品では味わえない温もりがある。
ハンバーガー3種、(11~13ユーロ)タコス2種(10ユーロから)、ミニケーキ3種(2ユーロ)。味と質を考慮すれば高いとは思えない。それにしてもよく売れる。一個一個を丁寧に作る為、待ち時間はかかるが、皆さん辛抱強く待っている。
注文したハンバーグは持ち帰り家で食した。ひき肉料理が余り得意でない私はハンバーガを食べる機会がそれほど多くない。年に何回か家族でマックを買うか、旅に出た時に食するぐらいである。そんな私でもカンチーヌ・カリフォルニアのそれは本当に美味いと思った。
ジョーダンさんはカリフォルニア生まれのアメリカ人。フランス人の奥さんと結婚してパリでこのビジネスを始めたのだそうだ。アメリカ人の好きな正統派ハンバーガーをパリっ子に。目論見は見事に当たり大成功である。
サン・ジェルマンにオープンしたラルフローレンのレストランで出すハンバーガ美味しいとの評判である。食の都パリにもアメリカの食文化がすっかり定着してきた感がある。世の中どんどん変わってきている、改めてそう思った。