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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.81 ブーランジェリー シャンべラン

 グリテン・フリーと言う言葉と商品がネット上で話題になって数年が経つ。元々アメリカで始まったと言われるこの商品だが、パリでも注目されるようになった。業界全体で言えばまだまだ少数派と言えそうだが、グリテン摂取によるアレルギー反応を起こす人にとっては朗報、関心が高まっている。ちなみにグリテン・フリーをフランス語ではサン・グリテンと言う。

   

 今年1月開催されたメゾン&オブジェの展示会食部門に、パリのブーランジェリー、シャンベランが出展して注目を集めた。パリで最初のグリテン・フリーの店である。この展示会は家具、インテリア商品がメインだが、食関連の出展企業もある。数は少ないが、それだけに目につき易くユニークなコーナーになっている。

 未だ若いオーナー、ナタニエル・ドボアンさんの話を聞きながら、早速試食をさせてもらう。四角形厚手のベニア板見たいなパンを一口大に切った試食用、見た目は固そうだが、口に入れて噛むとモチモチ感があり、思ったより柔らかい。普段口にするパンと若干の違いはあるが、美味しいパンである。

 

 シャンベランが1年位前にオープンして話題になっていることは何となく聞いていた。米粉を使用したパンにも興味はあったが、ナタニネルさんに会うまでは店に行って見ようと言う気は正直余りなかった。

 パンはやはり小麦粉を使ったあの独特の歯触りと風味が一番、それに勝る物はないの思い込みからである。幸いグリテンに対するアレルギー反応も持っていない。

 パリ11区と言えば、先のテロ事件で大勢の市民が集まったリパブリック広場の右側、サンマルタン運河とペーラシェーズ墓地に挟まれるように広がる一帯である。リパブリックから3番線に乗り換えてメトロ、パルマンティエで下車、エスカレーターで上がるとリパブリック大通りに出る。この通りを渡ると目の前にオベルカンプ通りがある。角のラベンダー・カラーのパティスリーが目印、その通りを右に折れ、二本目の角を左に曲がると正面にグレーの壁面にガラス張りの店シャンベランが見える。メトロから歩いて5分たらずの距離だが、初めての方には少し解り難い場所なのでご注意を。

 私が店を訪れた時は3月とは言え気温は日中6℃。未だ寒い日だったが、テラスの席で寛ぐ人がいた。ドアを開けると左側のショーケース前には行列、テーブル席は既に満席で空きのテーブルを待つ人もいる。

 パトロンのナタニエルさんは外出中とのこと。事前に許可を取っていたので、客が少なくなった状態で写真を撮る。店内はシンプルでモダンな空間に設計されている。入り口左にショーケースがあり、中にケーキが並ぶ。色鮮やかで華やかなと言った感じではないが、丁寧に作られた独特の雰囲気を持ったケーキ類である。ケース後方の棚には各種パンが並び、そのいずれもが美味しそうだ。

 何種類かのパンがあるが、いずれもベースは米の粉を使用している。米の種類はイタリア産とフランス産をバランス良く混ぜた物だそうだ。自家製の工房が南仏にあり、そこで
もう一人の経営者であるトマさんがすべての原材料生産を担当している。

 5種類のシリアルが入ったパン・オウ・サンク・グランやプレーンな味のシャンベランなど、物によってはそば粉を加えたパンもある。ケーキ類は基本米の粉を使用している。

 タルト・シトロンなどの各種タルトにマフィン、クッキー、フォンダン・ショコラ、ブラウニーなど、いずれもこの店の持ち味を生かした優れものだ。

 店には上田さんと西田さん二人の日本女性がいる。上田さんはシャンベランがオープンした時から働いているそうで、元々ナタニエルさんの知り合い、通常は午前中の勤務だそうだ。商品知識も詳しく、日本人客に重宝されている。一方の西田さんは今後カナダに移住の予定という。

 店にいる間、次々と客が訪れる.その繁盛ぶりは想像以上のものだった。国内外メディアの関心も高く、日本の雑誌も既に5紙が取材済みという。日本からの観光客で店を訪れる人も多いそうだ。この人気に、フランスはもちろん国外からも提携の打診があるという。まだまだ足固めの状態、体制が整ったら海外進出も視野に入れているそうだ。

 帰りにシュケットを買った。小麦粉を使った作りたてのシュケットは表面がカラッとしている。その辺の違いを比較したかったが、米粉を使ったそれも同じように張りがあり、思った以上に美味しい物に出来上がっていた。

 

 3月19日から4日間、ポートド・ド・ヴェルサイユでBIO展が開催された。各種あるBIOの展示会でも規模の大きい催しである。パリ市だけでも年に6回位開催されるBIO展だが、会場によっては、ややマンネリ化した感じのものもある。出展企業の顔ぶれも、いつの間にか固定化して目新しさにかける。展示会にはやはり新しい要素が必要である。オーガナイズする側に問題ありだと思うが。これでは、折角のBIOブームへ水を差す事になりかねない。そんな思いを持ちながら開場へと向かった。

 

 ポート・ド・ヴェルサイユ会場では各種イヴェントが開催中であった。そのひとつにサンドイッチ、ピザ&スナック展の看板がある。こちらの方が面白そうなので、急遽BIO展行きを中止して、この会場を訪れる事にする。

 主催者側の説明では出展企業100社との事。その内訳はサンドイッチ、ピザとその関連器具、各種スナック、パンとヴィエノワズリー、冷凍ケーキ、ドーナツ、クッキー、ミネラル・ウォーターを始とする各種飲料品と販売用スタンド機器など、多岐に渡った商品構成である。展示会としてはそれほど規模の大きいものではないが、内容は充実している。

 フランスを始とする近隣諸国の企業が多いが、ポーランドなど東欧国からの参加もある。熱気のこもった会場は思った以上の入場者数で活気があった。

 食関連展示会の魅力は、試食が出来る事にある。試食することで物の味が解り、客の興味もます。一見無駄に見えても、客の反応を見ているとその違いが良く解る。試食品のないスタンドをパスする客は以外と多いのだ。

   

 今回もサンドイッチを始め色んな国、地方の美味、珍味を試食出来た。通常展示会場での試食と言えば、小さく切り分けたものを皿に盛って出すケースが多い。ところが、この展示会では、1個丸ごと惜しみなく試食させている。一人では食べきれない物もあるが、殆どの客はカップルか何人かのグループだから,上手く分け合って食べている。

 会場内のコーナーでピザ職人によるコンクールを開催中、大勢のビジターを集めていた。もうひとつのコーナーではサンドイッチ・ビジネスに関してのセミナーを開催中で、講師による業界発展の経過、今後の展望などを講演、ここにも大勢の人が集まっている。期間中色々なセミナーが用意されているという。食のプロを対象にした展示会だが、新たに食関連ビジネスを始めようとする人も多く、個々のミーティングにも熱がこもる。

 最近、パリでも軽食関連の新しい店が増えている。その代表がサンドイッチ店だが、中華、和食の弁当屋も多い。タイ料理がメインのチェーン店が次々と店を増やしていると言う話も聞く。

 レストランやカフェでの食事に比べ値段も安く、持ち帰り客も多いこの業界だ。狭いスペースでも商いが出来ると言う利点も加わり、効率よいビジネスと注目されている。


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