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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.83 ブーランジェリー、パリ・バゲット

   

 セーヌ川に架かるポン・デ・ザールの欄干が新しくなった。この橋はパリを訪れる世界中の人達が南京錠を欄干に飾る事で人気のスポットであった。次々と増えていく南京錠の重みで橋の一部が壊れるなどの被害が続き、ついにパリ市が南京錠の欄干を撤去。

 改築期間を経て新たな欄干が登場した。生まれ変わった欄干外側はチュニジア系のアーティストがデザインを担当、橋の上流シテ島側はピンク、下流側はブルーの色を中心にアラビア文字を使うなど抽象的なデザインに仕上がっている。

 欄干内側もフランス。ポルトガル、チュニジア、レ・ユニオン出身若手作家の作品で新たな趣きの世界を展開、新感覚の芸術橋を作りあげている。

 新装なった欄干については賛否両論の様相だが、パリのセーヌ川に架かる32の橋の中で異彩の存在である事に異存はない。新しい観光スポットとして愛されるかどうか、暫くは市民の話題になりそうなポン・デ・ザールである。

 

 バカンスを一月後に控え、パリ名物とも言える道路工事が各所で始まった。曜日や時間によっては車の渋滞も激しく、排気ガスの数値も上昇一方である。おまけに訳の解らないストも重なり、バスの遅れや終着場所手前での途中ストップも増えている。長い時間を待ってやっと来たバスに乗ったら、2つ目のバス停でストップといった事も日常的になっている。それに文句を言う乗客も無く、スト慣れとでも言うのか、如何にもパリらしい市民の反応だ。ひと昔前に比べるとバスやタクシーの専用道路が増えたので不便さは半減したが、慣れない外国からの観光客には誠にお気の毒な状態である。

 例年ならバカンスの期間に合わせる各種工事だが、今年は何故か早めの始まりだ。ルーブル美術館横のカルーゼル橋も歩道工事で車道専用状態になっている。歩行者や自転車族には誠に不便な道路事情、至る所でこの様な状態が続いているパリである。

   

 パリ1区に新しいブーランジュリーがオープンした。店の名前はパリ・バゲット、オペラ通りから横道に入るサン・オーギュスタン通りの37番地になる。この通りにはラーメン・金太郎やブック・オフなどがあり、パリに住む日本人にはお馴染みの通りである。店があるのはプラス・ガイヨンの一角、色んな道が交差する小さな広場だが、店の入り口はこの広場に面している。

 入り口を入ると正面にショーケースがあり、中に作り立てのパティスリーが並らべてある。一般的にブーランジュリーのパティスリーはやや大ぶり、どちらかと言えば庶民的な作りのものが多いが、この店の物は見た目も美しく形も上品に仕上げてある。種類はさほど多くないが、バランスの良い品揃えだ。L字型のケースに沿って奥に進むと、各種パンとパッケージされたサラダ、軽食が用意してある。レジ裏の壁にはバケット棚があり数種類のバゲットやパン・カンパーニュなどのパンが並ぶ。

 私が店を訪れたのは新装オープンの前日、どんな店が出来たのかと覗いていたら、スタッフの一人が「良かったらどうぞ」と声をかけてくれた。明日のオープンを前に、商品は殆ど揃っているのでと言う。ついでに写真撮影の許可ももらい、仕事の合間に簡単な説明も頂く事になった。レジ横に試食用のパンが籠に用意されている。乾燥果物入りのパンを頂いたが、香りも良く上等の味に仕上がっている。

 店の名前がパリ・バゲットでは、ここパリに新しくオープンするブーランジュリーとしては代り映えがしない。ちょっと不思議な感じ受けたが、実は韓国を代表する製菓、製パン企業SPCグループが運営する店だそうだ。このグループは韓国内に2300店舗を有し、上海、シンガポールなどの都市、アメリカやベトナムにも店舗展開をしていると言う。店の名前は全てパリ・バゲットで統一、パリでは2店舗目のオープンだそうだ。

 1階がブランジェリー、2階はサロン・ド・テになっている。ここではゆったり寛ぎながら軽食やお店自慢のパティスリーが頂ける。

   

 元々この場所はブーランジュリーがあった所である。いつの間にか店を閉めたようで、長らく空き店になっていた。2ヶ月位前の事、この場所で工事が始まると、新しい日本スタイルのブーランジュリーが出来るとの噂が流れ始めた。日本の製パン企業がパリに進出と言う話や、パリ既存の日系ブーランジュリーが新たな店をオープンするといったような類の話である。

 オペラ界隈には日本スタイルのパンやパティスリーを販売して成功している「アキ」がある。16区には「YAMAZAKI」もあり、さらに店舗を持たず日本食品店やスーパーなどに手広く商品を置く「シーバス」などの企業がある。いずれもパリの日本人や日本風のパンやケーキを好むフランス人に人気がある。

 新しい日本式のブーランジュリー、オープンには在住日本人の皆さんもかなりの期待を寄せていたようだった。オープニングの日に様子を見に出かけてみたが、日本人客も結構いる。一番多かったのは韓国人だが、これはすでにブランドのイメージが定着しているからだろう。更に加えて前の店からのお客と思えるフランス人も多かった。オペラ通りから近いこともあり、アジア系の観光客も多く、初日から結構な賑わいだ。

 韓国企業がオーナーと言うことで、韓国で人気の商品も多いのではの期待もあったが、結果はアンパンとクリームパンの2種類のみ。これでは少し物足りない、これからどの様に変わっていくのか楽しみだ。出来ることならもう少し韓国や日本風テーストの種類を増やして欲しい。そのためのノウハウは当然持っていると思うからだ。

 

 フランスのリオンでイスラム系のテロが発生した。今の段階で詳しい事は分からないが犯人は捕まったと政府の発表である。先のテロでパリでも警備が強化され、街に軍隊が増えていたが、最近ようやく落ち着きをみせたやさきの今回のテロである。

 同日、チュニジアでもイスラム系によるテロがあり、リオン以上の被害者がでたと報じている。チュニジアを始め北アフリカ諸国はヨーロッパからの観光客で国の財政を補う観光資源国。このテロで早々に引き揚げる旅行者が出始めているようだ。テロに伴う国の経済被害も増す事だろう。ニュースによると北アフリカへのバカンス予約キャンセルが続出だそうだ。気の毒な事である。

 ルーブル美術館を始め人の多く集まる場所やユダヤ教会、学校などには、今日から又、軍人による警備が厳しくなっている。パトロール警官の数も増えている。

 パリでは今メンズ・コレクションの開催中である。世界中からデザイナーやそのスタッフ、モデル、アパレル・メーカー、バイヤーやプレスが沢山集まっている。会場には多くの人の出入りがあり、ユダヤ系の企業も多数参加しているのでテロに狙われ易いと言われている。主催者側にとっては想像以上のプレッシャーであるらしい。何事もなく終わる事を祈るのみだ。


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