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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.82 イル・ジェラート・デル・マルチューセ

 陽光に輝きが増してきた。快晴の日など日差しに向かって、目が開けられない程の強さがある。この輝きが戻ってくると、若葉が目に染みる季節となる。サン・ジェルマン教会の大きなマロニエに白い花が咲いて、風に揺れている。

   

 明るい日差しに誘われ、ウインドー・ショッピングを兼ねて街を散策する。この界隈で一番賑わうビッシー通りに入ると、アイスクリーム屋の前に長い行列が出来ている。本当にパリっ子はアイスクリーム好きだ。店内は勿論、店のテラスも満席。大人も子供も、男も女も恥じらうこともなく、アイスクリームをペロペロ舐めながら通りを歩く。その姿を見ていると本当に美味しそうに見えるから不思議だ。

 あるレストラン関連の業界紙調査で、デザートにアイスクリームを注文する客が、毎年上位に並ぶと言うのも頷ける。

 殆どの店が4月から9月迄、晴れの日は毎日行列が出来る。半年が勝負の様に見えるが、冬場でも買う人は結構多い。単価はいずれも約3ユーロ前後だが、持ち帰り客が多いだけに割の良いビジネスだと思う。

 

 サン・ジェルマンに新しいジェラートの店がオープンした。高級でシックなイタリアのイメージを元に作られたと言うが、見た目はロシアの宮殿を思わせる。白塗りに金箔を施した店構、いかにものと言った雰囲気を感じさせる店である。ディスプレーもお洒落。今はパックに合わせての飾りだが、何とも上品な演出だ。

 通りに面して店の左側が入り口、正面奥に厨房があり、そこで働くスタッフの姿が見える。その前のケースには自家製のジェラートがズラッと並ぶ。入り口左側にカウンターがあり、ケーキを並べたショーケースに。店のケーキは勿論自家製である。その横に丸い鉄製のプレートがあり、熱したその上でジェラート用のコロネが焼かれる。更に別の機械で動物の角状に形作られる。1枚1枚が手焼き、シェフの拘りと丁寧な仕事ぶりが、こんなところにも現れている。

 目の前で焼き上がったコロネを見ていると、そのままで食べてみたくなる。何とも言えない甘い香りに喉がなる。

 ジェラートにはイタリア語のネーミング付いている。クリームとマダカスカル産バニラのブレンド、シシリア産ピスタチオ、リコッタ・チーズと白トリフの味、ペコリノ・チーズとトマト・バジル味などイタリア風味満載のラインだ。何れも高級材料を揃え、しかも100%自然食材を使用している。

 値段は持ち帰りで3.2—4.1ユーロと他の店に比べてやや高めの設定だが、それに値する満足度だ。

 入り口右奥にサロン・ド・テがある。18世紀イタリア風のインテリアでゆっくりと寛げる空間が心地よい。ここではジェラートを初めシェフ自慢のケーキと紅茶、コーヒーを頂ける。

 ローマから招いたというシェフは、ジェラート作りのプロ、店の全てを任かされているそうだ。人気のイタリアレ・ストランIL SUPPLIのオーナーが経営する店である。イル・
スープリはこの店の隣にある。パリで一番お洒落なジェラート店の登場である。

 場所は劇場で有名なオデオン座に近く、店の斜め前にはジェラール・ミュロのサロン・ド・テがある。その少し先には日本茶が楽しめる寿月堂もあり、人気スポットとして甘党注目の場所となっている。

 

 ポート・ド・ヴェルサイユで開催された食を中心とした展示会MDDエキスポに行ってみた。毎年1回開催されるが2014年は訪れたヴィジターが、二日間で5,500人であったそうだ。今回も初日から沢山の客で賑わっている。低迷と言われたヨーロッパの景気もようやく立ち直りを見せ始めた。

 出展企業はフランスを中心としたヨーロッパの近隣国が多いが、北アフリカ、中近東からも参加している。特に今回はトルコが食品以外の企業と連動して参加、多くの客を集めていた。スタッフの数も増やし、商談もスムーズに行くよう心がけている。

 

 ヨーロッパ、特にフランスとベルギーが中心であったチョコレート・ビジネスだが、最近トルコ企業の参入が注目されている。

 ナッツ、ピスタチオなど原材料が豊富に採れるお国柄、更に人件費の安さが後押しして企業の勢いをましている。食品の幅も以前に比べ大幅に広がっている。いずれも洗練された商品と言う意味では、今ひとつ物足りなさがあるが、これから期待が持てる生産国と言えるだろう。

 政情が不安になると、色んな所に歪みがでる事を証したのがアルジェリアのブースだった。広いスペースを確保したものの、開催日になっても商品が届かないようで、スタッフの説明もどこか空虚。ひたすらアイホンを眺めて過ごしている状態だ。

   

 この展示会、食品部門は五つのセクターに分けられている。注目を集めていたのが冷凍食品の分野で、加工品の種類が大幅に増えている。製菓関連でも生のケーキと冷凍ケーキの見分けがつかないほど、タルト、エクレア、フラン、チーズ・ケーキなど種類も多く、その味も向上している。特に冷凍マカロンを作るメーカーが多く、何れの企業も力をいれている事がわかる。

 著しい進歩のあとが見られるのが冷凍魚の分野だ。中でも加工製品の品質向上は目覚しいものがある。こちらで人気の魚と言えば、サーモン、ヒラメ、カレー、タラなどが挙げられが、調理商品でもこの種類の物が良く売れるそうだ。色々と試食をしてみたが味も上々、完成された料理が多い。

 今回もパリの料理学校が協賛してる。学生実習の場にもなっており、色んな料理や飲み物を作って披露。サービス部門の生徒がヴィジターにサービスをしていた。中々の好評ぶり沢山の人が集まって料理を楽しんでいる。

 数あるメーカーの中で興味を引いたのが、メイド・イン・フランスのコーヒーである。
フランス産コーヒーと言われても余りピンとこない方が多いと思うが、実はこの業界では希少品として高評価されている。

 カリブ海にある群島の中にグアダループと言う島があるが、隣の島マルティニークと共にフランス領である。火山島で標高差がある島の特性を生かして、1720年フランスからコーヒーの木を移植、栽培が始まった。全盛期には660万本の木があったと言われる。1966年に大型サイクロンに襲われ、その被害で全滅。その後国の援助などで再び栽培を始めたが、その数も大幅に減っている。現在、ここで採れるコーヒーの殆どはフランス国内で消費されている。幻のコーヒーと言われる由縁だ。

 出展しているのは、エドゥアールというグアダループのコーヒー焙煎専門の会社。元々はコーヒーを栽培する農園であったが、ニ代目の当主イヴァン・エドゥアールが1955年にグアダループ最初のコーヒー焙煎の会社を設立.粉末コーヒーを発売する。

 現在三代目になっているが、ユニークなノウハウとモダンな設備、製造法で西インド諸島コーヒーの伝統を守っている。独特の味、香りの良さで多くの支持者を集めている。日本にもぜひ紹介したいコーヒーだ。

 食品の他にコスメやプラスチック製品などの企業も数多く参加している。それらのコーナーにも沢山の人が集まっていたが、そこは素通り。気になる食品の分野をひたすら歩き回る一日となった。


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