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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.78 シュークリームのオデット

   

 レアールの広場近く、モントルゴーユ通りにオデットの新しい店がオープンした。オデットは昨年ノートルダム教会近くにオープンしたシュークリームの専門店である。

 見た目の可愛さ、味のバリエーションの巧みさで、忽ちパリのお菓子好きの間で話題になった。一口よりやや大きめの食べ易いサイズ、一個食べると二つ、三つめに手を伸ばしたくなる。絶妙の風味、表生地歯さわりの良さ、バランスの取れた食感と程よい甘味が食欲をそそる一品である。中に入ったクリームはショコラ、キャラメル、カフェの定番に加え、ピスタチオ、緑茶、シトロン、バニラ、プラリーヌなど12種類、何れも風味豊かな魅力ある商品を作りあげている。

   

 店のオーナーはフレディリックさん、ブルターニュの出身で、オデットの店名は彼の祖母の名前である。子供の頃オデットさんが作ってくれたバニラ風味のシュークリームがオデット・シュークリームのルーツだそうだ。店にはオデットさんが写った古い写真が飾ってある。素朴さの中に都会的なセンスの行き届いた店の作りだ。

 新しく出来たレ・アールの店も、サン・ミッシェルの本店同様小じんまりした店である。道路に面してショー・ケースがあり、中に沢山のシュークリームが整然と並べてある。

 その中から好みの物を選び中に入れば、店内にゆったりと寛ぎながら頂けるスペースがある。丸テーブルが5脚、椅子が13席。出来たてほやほやの店だから全てが清潔、居心地も良い。若いカップルや親子連れのお客も多いそうだ。

 訪ねた時、スタッフのマルゴさんが一人で店全体を仕切っていた。持ち帰り客が多く、選んだシュークリームを手早く箱詰めにし、脇にあるレジを打つ。その後、席で待つ客に飲み物を運んで、再びショーケースの前に立つ忙しさだが、笑顔を絶やす事がない。

 モントルゴーユ通りはレアールを起点に1区から2区に抜ける通り。有名なパティスリー、ストレールやレストラン、エスカルゴなどがある賑やかな商店街である。特にレアールに近い界隈は近年ピザやホブズ(アラブ風焼きパン)、サラダ専門などテイク・アウト主流の軽食店が増えている。それを目当ての観光客も多いそうだ。

 

 ここ数年の傾向だが、パリのパティスリー業界で単品、又は品揃えを絞った店が増えている。単品専門店にする事で店の特色を出し、無駄な仕入れを極力抑える。店舗も小型化して家賃を抑え、スタッフも少人数にする。この方式が上手く行っている証は、本店の他に2号、3号店が出来ている事だ。更にフランチャイズ化もし易い利点がある。

 この稿でも紹介済みだが、エクレア専門店の火付け役とも言われるレクレール・ドゥ・
ジェニは最近、メトロ・オデオン駅の近くに新しい店をオープンした。既にパリに3店舗、ギャラリー・ラファイエットにもコーナーがある。店のスタッフの話では、東京にも進出したと言う。

 レクレール・ドゥ・レクレールは、本場のエクレア作りを体験をする日本からのツアーが組まれるなど、話題になっている店。日本の女性誌などにも紹介記事が多く、日本人客も増え続けているそうだ。この店の2軒隣には四つ星ホテルが完成間近、オープンしたら更なる集客が見込めるそうだ。

 シュークリーム専門店では今回紹介するオデットの他にラ・メゾン・ドュ・シューが相変わらずの人気ぶり、売上数も伸ばしている。両店の違いはオデットのシュークリームには花柄のアイシング飾りがあるが、ラ・メゾン・ドュシューは昔ながらの形に拘っている事だろう。

 これらの店はパリを本拠に成長している店だ。地方に目を向けるとサン・トロペ発祥のタルト専門店ラ・タルト・トロペズィアンヌがある。パリを始めフランス各地に出店、又はフライチャイズ店を広げ、成功を納めている。

 この流れ、益々増加の傾向にあり、更に増え続けることだろう。次にどの様なお菓子の店が出現するか、今から楽しみである。

 

 今年もパリ市からのクリスマス・プレゼント通知が届いた。その手紙を持って区役所に行き豪華なショコラの詰め合わせを貰った。何とも気の利いた有難いプレゼントである。昨年同様ドゥ・マルリウのショコラ詰め合わせだ。

 創業1906年、フランスを代表する老舗ショコラティエのひとつである。ローヌ・アルプス地域のシミランにある店。シミランはスイス、イタリアとの国境に近く、人口凡そ1300人の小さな町である。避暑地として有名なグルノーブルに近い。グルノーブルは冬のオリンピック開催地でもあり、日本でもこの地を知る人は多い。

 パリ市のプレゼントが遠く離れたシミランで作られるのも不思議だが、100年以上も続く老舗店の実力と言う事だろうか。理由はともかく、見た目も味も文句なしに美味しいショコラである。

   

 毎年賑やかになる一方のクリスマス市だが、今年はさらに市の数が増えたパリの街である。サン・ジェルマン界隈のクリスマス市と言えば、サン・ジェルマン教会横のサン・ジェルマン通りとサン・シュルピス教会の前広場が有名。今年は何故かサン・シュルピス広場は新年を迎える前に市が無くなった。その他の場所は、毎夜遅くまで賑わっている。

 今年はサン・ミッシェルでも市の数が増えている。タピスリーで有名なクリュニー美術館の横にも市が出来ている。パリで一番観光客が集まる場所と言えば先ずはノートルダム大聖堂だが、その近くにある公園にも新しい市が立ち、連日大賑わい。開催期間中シャンソンを始め各種芸人のパフォーマンスも見られる。

 クリスマス市と言えば、フランス北東部アルザス地方やドイツが有名だが、いつの間にかパリでも沢山の市が立ち、それを目当てに訪れる観光客も増えているいるそうだ。行政でも積極的にカバー、今ではパリの冬を代表する風物詩となっている。

   

 パリは今年もホワイト・クリスマスに縁がなかった。ここ数年、年末になると不思議と気温が緩んでくる。ホワイト・クリスマスを待ち望む人々の想いは、絶えることのない永遠の夢、大人も子供も想いは同じだ。

 イヴの日、恒例となった市内のパティスリー、ショコラティエ巡りに出かける。自転車で回るのも何時もと同じ、実に便利である。

   

 右岸ではフォション、エディアールのあるマドレーヌ教会周辺からラ・デュレ、レ・マルキ・ド・ラデュレ、ジャン・ポール・エヴァン、ミッシェル・クルイゼルなどの有名店が並ぶサントノーレ通りと定番コースを走る。相変わらず洒落た店のディスプレーである。

 昨年との違いは新しい店が出来ていたことだ。ベルギー・ショコラで有名なピエール・マルコニ店のオープンである。バンドーム広場に近く、ジャン・ポール・エヴァン店とは数軒の距離、モダンな設計の洒落た店である。マルコニ店はサン・ジェルマンにもあるが、今ひとつ勢いがない。サントノーレ進出で勝負をかけると言う事だろう。

 この界隈はショコラティエの激戦地と言われている。長年サントノーレ通りで営業を続けたゴディバはオペラ通りに移転して新しい店をオープンした。

 左岸ではピエール・エルメ、ジェラール・ミュロの店に朝から行列が出来ていた。ミュロ店は今年も予約客用のテントを設え対応。アルノー・ラレールやミールト、パトリック・ロジェーの店が大勢の買い物客で賑わっていた。


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