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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.56 新しく開店したエクレア専門の店ラトリエ・ドゥ・レクレール

 詳しく調べた訳ではないが、恐らくパリで最初のエクレア(フランス語でエクレール)専門の店だと思う。先月パリ2区バシュモン通りににオープンした店。最近ファッション関連の店や会社が次々にオープンする事で、パリのおしゃれ好きの間で今話題になっている通りである。この店も見た目は新しいファッション・ブティックと思わせるほどしゃれた作りの店だ。

 

 

 

 ガラス張りの扉を押して店内に入ると正面に白塗り楕円形のショーケースがある。右側にもしゃれたショーケース。その中に、まるでアクセサリーのように色とりどりのエクレアが並ぶ。その数定番が14種、バニラ、メレンゲ、キャラメル、ショコラ、マンゴなどなど、何れも丁寧な仕上げで美味しそう。値段はパリの高級といわれるパティスリーのそれと同じような設定、サイズにより違いがあるが、3~6ユーロといったところである。フォアグラ、サーモンなど高級食材に拘ったサンドイッチもある。

 

 正面ショーケースの後ろにガラス張りの厨房がある。中で二人の若いパティシエが仕事中、ひとりはエクレアを、もうひとりはサーモンを使ったサンドイッチを作っていた。厨房横から奥にカフェ・ラウンジがある。カフェか紅茶を楽しみながらエクレアやサンドイッチを頂ける。ゆったりしたスペースにテーブルと革張りの椅子を設えた贅沢な空間だ。

 

 この新しい店を運営するのは4人の仲間で作ったという会社フォンダトゥール。その代表ギヨームさんに話を伺った。

 

 ラトリエ・ドゥ・レクレールは、2011年3月12日、仲間の一人の別荘にあった19世紀の古いトランクの整理をきっかけに生まれた。

 

 トランクの中にあったのは、1861年4月4日に書かれた手紙で、当時新しく細長いチョコレート入りのケーキの事が書かれていた。 色々と調べた結果、それは今で言うエクレアの事で、その当時「Petite Duchesse」(プチット・デュシェッ ス)(小さな公爵夫人)として人気があったケーキである。

 当時の名パティシエとして知られたマ リー・アントワーヌ・カレムが 得意としていたという。

 

 その手紙から凡そ150年後、ラトリエ・ドゥ・レクレールは最高の食材で新しいエクレアを作り、それをお菓子好きな方に食べてもらおう、とのポリシーの元に誕生する。

 エクレアはフランス人が最も好むお菓子のひとつと言われている。どのパティスリーでも売り上げベスト3の中に入るお菓子だそうだ。クロワッサンやバケットを毎年コンテストで選ぶように、有名女性誌がエクレアの格付けをして店の紹介をしているほどの人気商品だ。ランク付けと言えば、お菓子ではエクレアの他にガレットがある。

 ギヨームさん達がビジネス勝算ありとしてエクレアを選んだのも、こういう背景があっての事だそうだ。とは言うもののかなりの英断だと思う。

 

 厨房は16区にあり、そこで殆どの商品が作られる。生地をこねる以外は全て手作りとの事。3時間毎にワゴンで運び、仕上げだけ店の厨房で行う。シェフはロイク・ブレさん、世界各国の有名ホテルやパティスリーで仕事を重ね、ワールド・ショコラ・コンテストで最優秀を獲得した経歴を持つ方である。
 ロイクさんの幅広い人脈を通じて集められた素材の数々、拘りも半端ではない。バニラひとつをとっても、マダカスカル産の中から厳選してそれのみを使っているそうだ。他の材料も同様である。
 コーヒーを頂きながらキャラメルとマンゴのエクレアを試食する。素材に拘ると言う事はこういう事なんだ、と改めて思った。見事な出来栄えである。パティスリーのオート・クチュールを作ると言うのがギヨームさん達のポリシー。それが理解できるような味と店の雰囲気である。

 

 夢はこの店の2号店を日本でオープンしたい事、日本文化に興味を持ち、それを認めると言うギヨームさん。この店を軌道に乗せ、出来れば2014年頃実現したいと言う。

 

〜パリのクリスマス2012〜

 今年もパリ市からの素敵なプレゼントが届いた。縦26cm横39cmの箱に45個のショコラが形良く詰められている。高齢者への特別プレゼント、何とも粋な計らいではないか。毎年クリスマスが近づくとパリ市より手紙が届く。その手紙を持ってサン・シュルピス教会前の区役所に行くと、この甘いプレゼントが頂ける。パリに住む人なら国籍人種に関係なしのイヴェントである。まるで子供が大好きなプレゼントをもらったような大人達の顔が見られる楽しい一日である。  

 

 小春日のような穏やかなイブを迎えた。どの店も朝早くから大勢の客で賑わっている。魚屋の前には特設盤台が設けられ、その上に鮮やかな色のイセエビやオマールが並ぶ。その隣には山と詰まれた生牡蠣の箱、クリスマス恒例の華やかな光景だ。パティスリーには長蛇の列、注文のクリスマス・ケーキを待つ人々の列である。

 

 

 ギャラリー・ラ・ファイエットの店内丸天井と豪華ツリーは有名だが、今年は丸天井が出来て100年になる。ディスプレーも一段と豪華になった。クリスマス商戦だけを例にとるなら、過去最高売り上げの声も聞こえてくる。不景気という言葉が嘘のような売れ行き、特に中国人観光客の購買力は目を見張らせる。どの売り場にも中国人スタッフを配して対応、オーバーに言えば「ここは中国のデパート」と勘違いしてしまうほどでの賑わいである。
 ノートルダム大聖堂が出来て、今年で850年になる。イヴからクリスマスにかけてのミサに大勢の人が集まっていた。クリスマスと言えばここフランスでは、家族団欒の日でもある。田舎のある人はパリを離れて実家で過ごす人が多い。我が家のあるアパルトマンでも明かりの消えた窓が多く、静かな聖夜であった。

 今年も残り数日となった。新年も穏やかな天気を迎えられるの予報、いい年でありたいと願う。

 


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