2025年04月14日
Vol.173 街が動く
フランスの村、町作りは古くから教会を中心に成された。私の住む街、モントローも同じである。歴史ある教会があり、その脇から街を代表する大通りが作られた。近くに大通りに面したメリー(町役場)が作られ、この教会とメリーを中心に今のモントロー旧市街が広がってきた。
教会裏側にはヨンヌ川が流れ、すぐ近くでセーヌ河と合流する。ヨンヌ川上流にブルゴーニュ商業の中心地オッセーがある。これらの関係でモントローはヨンヌ、セーヌ川交易拠点として栄えた。今では凡そ3万人の市となっており、セーヌ・エ・マルヌ県中心都市群のひとつと言われている。
何の変哲もない地方都市だが、歴史を探るとナポレオンが最後に勝利をした地であり、現在でもナポレオン支持者が多い。またブルゴーニュ候が暗殺をされた場所としても歴史に残る。名物と言えば今は製造されてないがポテリー(陶器)で有名なクレイユ・モントローの資料館が有名である。
3年前、現市長CHERON氏の肝いりで新しい市民会館が完成した。現在の市役所から凡そ1km離れた場所である。モダンな建物で今までにない広い会館、開館後いろいろなイベントが開催され市民の評価も高い。
モントローには各種医療関係を一カ所に集めた巨大施設がある。市民数に似合わない施設と言われるほどの敷地建物群である。その内容について詳しくは解らないが、とにかく広大な敷地であり、施設全体で働く人たちは多い。
新しい市民会館はその施設群の横に作られた。この市民会館の中にクレイユ・モントロー資料館がある。以前は独立した資料美術館があり、陶芸好きな人たちが全国はもとより海外からも訪れた。
この市民会館がある地域に今、街の中心施設が移行している。新しくできたビルの中に市警察、各種保険会社、市民医療機関が入居、さらには郵便局が近く移転するという。その先駆けとなったのが現市長の個人事務所である。
モントローのゴミ処理に付いては以前少しだがレポートで触れた。地方都市としては運営がうまくなされているの評価、市民も概ね納得との声を聞く。この組織を運営しているのが前市長のYves JEGO氏で、現市長とは犬猿の仲だそうだ。市長選にはこの両氏が出場、毎回激しい戦いを繰り返している。2年後には市長選があり、両者の前兆戦がすでに始まっているそうだ。
先月、旧市街にあるカルヴェール広場の一角にモントロー・サンディカという名の事務所が開設された。別に「TOMの家」の表記もある。モントロー各家庭または各所に設置されたゴミ箱にはこのロゴを描いたアニメ・キャラクターが貼ってある。
バス停前、通りと広場に面した角の一等地。元は不動産事務所があった所だ。まだ詳しい事は解らないが、簡単に言えばゴミ処理に関する問題、何でも相談事務所といった感じだろうか。
先日、偶然だが入口のドアが開いている。中を覗くとムッシュが笑顔でどうぞと言ってくれた。せっかくの機会、中を覗くと、応接セットが2カ所、部屋にはコーヒー器などが設えてある。広くて清潔なのにまず驚いた。普段は女性スタッフがひとり居るらしい。
Yves JEGO氏の事務所は市役所前にあり、市民相談所の形態をとっていた。その事務所は現在も継続しているが、一部市民の声では現市長の事務所移転に対抗して新しい事務所を作ったという声もある。
「TOMの家」の様な組合事務所が今までもあったのか解らないが、市民にとっては有難い場、事務所である。パリ暮らしの折は、この様な施設は見なかった。ひょっとしたら私の見過ごしか。それともモントロー特別の施設なのだろうかとも思う。
「TOMの家」事務所の外壁にモントロー市の地図があり、そこには42カ所のTOMの家マークが付いている。実際事務所があるのか、それとも大型ゴミ集荷所の印かも知れない。同様の事務所なら、モントローのゴミ処理は相当の規模である。特に移民を対象に作られた集合団地にマーク(印)が多いのに注目する。折を見て一カ所でも見てみたいと思っているところだ。
朝市の立つ広場の近くにゴミ捨て場がある事は、以前のレポートで書いた記憶がある。燃えるゴミ、ガラス瓶、プラスチック製品など、それぞれに分かれて箱がある。近所の住民は曜日、時間に関係なくこの場を利用する。
わが家でもたまに利用するが、主にガラス瓶を捨てる時にここに設置された専用箱に捨てている。不思議なのは箱の中がどの様な仕組みになっているのか、ガラスが割れる音が全然しない。もし可能なら一度このゴミ箱の中の仕組みを見てみたいと思っている。他の場所にも瓶類専用のゴミ箱があるが、こちらに捨てる時は割れる音が必ず聞こえる。
ガラス類と言えば、電球、蛍光灯など専用ゴミ箱がスーパー・カルフールの店内にある。気を付けて見ていると、利用する人が結構多い。
最近、ビニール袋やプラスチック袋を使用する業者が減った。特に食品関係の店にこの傾向がある。便利であっただけに買う側は不便に。多くのスーパーでビニールなどの袋が無くなり、今はほとんど紙袋である。
一方、朝市で良く見かける光景だが、ビニール、プラスチック袋持参で買物をする客が増えている。しかも新品の物でなく、何度も使用したと思われる袋が多い。
中でも卵を買う人たちのほとんどが卵専用のパッケージ持参である事。ばら売りの多い朝市の卵売り場では特にこの方法が目につく。しかも6個、12個単位の買い物で無く、自分の必要な数だけ買うという利口な買い物方法だ。
買いもの客に「袋が必要か」と聞く店が増えたのもここ数年の傾向である。気にして見ていると薬局での買い物、店のマニュアルでもあるかの様に必ず聞いている。ブーランジェリーやパティスリーでも同様の対応をする店が増えた。
同様に最近ほとんどのスーパーでレジの担当者が「紙は必要ですか」と聞くようになった。紙とは受領のレシートの事である。要らないと答える人が多いが、頼まれ買いの人、または大量購入の人は「要る」と答えている。
要は無駄を省くという会社の方針だそうだが、スーパー以外での企業でも賛同するところが増えている。そういえば私も要らないと答える側のひとり。長い行列のできたレジでひと手間省くだけと思っているが、買った商品の数、単価も見ないようでは到底お金持ちには成れないな、と反省しながらも「紙は要りません」と断っているのが現状だ。