2025年02月19日
Vol.171 1月
新しい年が明け、ブーランジェリーの棚にガレット・デ・ロワが並ぶ。新年=ガレット・デ・ロワのフランス製菓業界。新味はないが、これはもうひとつの宗教儀式、お国柄行事のひとつと皆さん受け入れている。
わが家でも新年早々に2個のガレット・デ・ロワを買って食後のデザートとしていただいた。いずれも中の餡はアーモンドである。私の住むモントローは人口3万人足らずの小さな市であることは以前報告した記憶がある。という事もありパティスリーという名の店がない。
パティスリー(ケーキ)専門の店がないという事で、ケーキ類はブーランジェリーで賄っている。ただ、ブーランジェリー店の看板にはパティスリーと併記した店がほとんどだ。一方パリなどの大都会では、パティスリーと看板を挙げた店があり、これらの店ではケーキ類が主流に売られている。
作り手によってはブーランジェリーのパティスリーと一線を画する人もいると聞く。パティシエが作りパティスリーの方が上との意識らしい。パティスリー、ブーランジェリー、ケーキなどなど表記が複雑だが、ケーキ屋パン屋、と単純にご理解頂けると分かりやすい。
先日久しぶりにパリに出かけ、パティスリーを覗き見した。どの店もガレット・デ・ロワが店頭を飾っている。ショコラ専門の店でも同様、見事なガレット・デ・ロワのオンパレードだ。
どの店の商品も洒落ている。さすがはパリだと見惚れて感心した。その分値段も立派だ。中に詰めた餡の種類も多い。主流はアーモンド餡だが、例えばピスタッチ餡の物にはガレットの表面にピスタチオの実を飾るなど、ひと目でわかるように工夫されている。ショコラ餡やそら豆などを使った物もありとバリエーションも豊富だ。
最近、パリ右岸のパティスリーを紹介する機会が増えている。という事もあり、今回はパリ左岸、サンジェルマン界隈のパティスリーを歩いてみた。できたらパッケージを主体にと思い店を覗く。
客がガレット・デ・ロワを買うと、紙製の袋に入れて手渡してくれる。中にはビニール袋もありだが、今は紙製袋が多い。以前はピザを入れる紙箱のようなものが多く使われていたが、いつの間にか紙袋が主流になった。
昨年もそうだったがここモントローではほとんどの店が紙の袋を使用している。パリのどの店でも紙やプラスチック、ビニールの袋を使用していた。箱に入れ、さらに袋に入れるという二重手間を省いている。
中には例外もあり、大手スーパーのカルフォールのガレット・デ・ロワは透明なプラスチックのパッケージの中に入れてある。今年も1個買ったが、大量生産のせいか味落ちしている。何となく損をした感じであった。当たり前だがお菓子にも鮮度は大切だ。
1月5日公現祭が終わった今でも、全てのパティスリー、ショコラティエ、ブーランジェリーでギャレット・デ・ロワを売っている。フランスでこのガレットが新年のお菓子、縁起菓子と言われる証である。
毎年行われるパリ、イル・ド・フランスのガレット・デ・ロワのコンクールで日本人パティシエが3位に選ばれたそうだ。静かにだが、日本でもブームの兆しが訪れているとも聞く。流行り廃りの激しい日本人の趣向にうまく填ることを期待しているところだ。
ガレット・デ・ロワに付き物のフェーブが今年は3度も私の取り分の中に入っている。良い年になりそうな予感、これを縁に精一杯頑張ろうと思っている。
2月20日、今年最後のガレット・デ・ロワをカリフールで買った。セール期間でもあり値段凡そ25%引きになっている。中の餡は今年初めてのへーゼルナッツ(ハシバミの実)を使ったユニークな物、初めていただいたガレット・デ・ロアの餡だが、それなりに美味しかった。フェーブはライオン・キングに登場する動物だった。
さて、肝心のパッケージ。パリやイル・ド・フランスには多くのパティスリー、ブーランジェリーがあるが、それぞれの店が独自のデザイン・パッケージを使っている訳ではない。多くは既成のパッケージを使用している。
パッケージ・デザイン会社があり、そこの営業員がサンプルを持参して店を回り営業するというケースが多い。という事で同じデザインのパッケージを使用している店は多い。その場合店側は近くの他店と競合することを避けるそうだ。
とは言え、モントローの一般的なブーランジェリーでは箱の形、デザインはできるだけオリジナルに見える物を選ぶ傾向にあるという。特別に店独自のデザインをパッケージ会社に注文することはほとんどないそうだ。
一方バケットやクロワッサンを入れる紙袋などはあまり気にせず、他店と同じデザインを選ぶ傾向にある。イラスト入りの紙袋が多いが、パリの雰囲気を持つ、例えばエッフェル塔、凱旋門などのイラストが好まれるそうだ。パリという街そのものが商品価値があるという事だろう。
例外として、大手食品スーパー、グランフレと併設するブーランジェリーは同じモントローにあるブーランジェリーと一線を画して独自のデザイン・パッケージを使用している。
グランフレは全国展開をしている食品専門の大型店でテレビでのコマーシャルも盛んにしている。その脇で店を展開するのがブーランジェリー・マリー・ブラッシェル。菓子パン類の種類の多さ、味の良さで独自の存在を確立している。
一方、パリの店ではオリジナルティーのあるパッケージを使用している所が多い。大小、商品別に数多く使用するパッケージの中には既成の物で他店と競合する物もあるが、その店のメインとなるケーキ類には、店独自のオリジナル・パッケージを注文するという。
そんな中で存在感を示すのは、老舗や高級品を扱う店だろう。代表的な例で言えばショコラの老舗ドゥボーブ・エ・ガレやマカロンで有名なラデュレ。これらの店のパッケージは独自のデザインで、コレクター間でも不変の存在と言われている。
ドゥボーブ・エ・ガレ今シーズンのパッケージは白を基調に、相変わらずの高級感を漂わせている。この店の特色はパッケージの品格を高めるために布製のリボンを良く利用するが、今シーズンもビーロードをうまく生かしている。
パリの本店は6区と7区の境サン・ペール通り。偶に覗くのがブース(証券取引所)前広場に面した店、ヴィヴィエンヌ通りにあるこぢんまりした店である。スタッフ数は少ないがとにかく親切丁寧、満足できるサービスをしてくれる。
客は証券取引所で働く人が多く贈答用、お土産にも使われるという。結構な値段だが聞いて納得、うまく場所選びをしたものだと感心した。
出かける時、他の人気店もと思っていたが、相変わらずの交通機関の対応の悪さで思うように動けない。この日も95番のバスが遅れっぱなし。バス停の表示に11分で到着と表示されるも到着10分前にいきなり到着15分後の表示に。15分待つうちに95番は運行停止の文字が流れる。今、パリは常にこの有り様で予定が立てられない状態である。