小川征二郎のパリ通信


Vol.167 秋立つ

 

 パリ・オリンピックも無事終わり、今はパラリンピックに市民が沸き立っている。どの会場も満員大賑わいの観だ。これ程市民の共感を得るとは思わなかった。
 正直、パラリンピックについては余り関心なかった。東京大会の時、ニュースでこの競技を見たぐらいでどんな競技があるのかさえ知らなかった。今思えば恥ずかしいの一言である。
 今回のパリ大会でも、大会入場券がよく売れているとのニュースを見聞きして、コンコルド広場で行われた開会式をテレビで見た次第である。関心の薄さは相変わらずの状態であった。気の毒な方達がいる、そのくらいの認識で画面を見続けた。
 入場者の登場を見ている内にパラリンピックの意義を何となく意識する。開会式はある種の感動を覚えさせてくれた。翌日から始まる各種競技をできるだけ多く見ようと思うようになる。
 それ以降はできるだけの時間を割いて、テレビと向かい合っている。オリンピックの延長戦であると思っていた各種競技が、どれほど多くの人たちの支えによって成り立っている事を知ったのは私にとって何よりの賜物である。大変な努力、工夫、忍耐、賛同などなど思いもよらない事によって運営されていることを初めて知る。
 今、パラリンピックを見る視線の違いを意識しながら各種競技を見続けている。改めて思う事は五体満足であると思い込んでいるわが身の奢り傲慢さである。
 
 国を挙げての二つのイベントもいよいよ終わり、周りに秋の空気が漂う。場所によっては並木の葉が色づき、落ち葉が舞う日もある。記録によると2001年来の9月の寒さが到来するとある。

 振り返ればパラリンピックが過熱する中、長い夏のバカンスが終わり、街に正常が戻り始めていた。朝、窓を開けると通学途中の子供たちの会話や笑い声が聞こえてくる。下校時の広場に面したブーランジェリーには長い行列ができている。
 おやつを求める子供たちの列だ。ショーソン・オ・ポムやパン・オゥ・ショコラといったヴィエノワズリー類、クロワッサンを買う子供が多い。昔からよく見かける光景だ。店のスタッフの話によると、最近人気があるのはグミとの事。駄菓子にも流行り廃りがあるらしい。
 オリンピックやパラリンピックでテレビを見る機会が増えた事は前にも触れた。バカンス中のテレビCMで気づいたことだが、お菓子、中でもビスケットやガレットなどの多さである。実際、バカンス期になるとスーパーなどでもこの類の商品がよく売れるそうだ。

 そんなこともあり、8月某日パリ6区にあるマルシェ・サンジェルマンに出かけてみた。いろんな店が入店しているマルシェだが、このマルシェの特色は建物の中にあること。以前ここにはイギリスの有名スーパー・マックス&スペンサーも入店していた。
 何年か前、マックス&スペンサーは撤退、しばらく空き店舗になっていたが新たにEPICがオープンした。モノプリ系列の食品スーパーである。大型スーパーより品揃えが高級化したと言われ、今人気の店となっている。
 元々、この界隈の住民は富裕層が多い。パリでも家賃が高いことでも知られる地域でもある。そんな中にできた小型(中型かな)スーパーEPIC、普通の大型スーパーに比べ客層も良く、品揃えも高級志向、それなりの物が揃っている。

 マビヨン通りに面した入口を中にいると目の前に店の各種商品を選んだ棚があり、それらの商品が綺麗に並べてある。右側は果物、野菜コーナー。ここのディスプレイが見事である。揃えた果物も厳選された高級感のある物、有名デパート並みの品揃えである。このコーナーを見るだけでもEPICの企業姿勢がわかる。
 さらに中へと足を運ぶとお菓子類の棚、大型スーパー店に比べると商品数は少ないが、いかにも選んで揃えましたといったものが多い。バイヤーの選択眼の良さが各商品に反映されている。
 ビスケット、クッキーなどが並ぶ棚の前に立ってみた。フランスの各種メーカーの中に珍しくイギリスやベルギー製の物もある。伝統的なある意味クラシックなデザインが多いのはやはりこれらのお国柄か。見方によっては大人好みのデザインとでも言えよう。
 そう言えばここがマックス&スペンサーであった時、同じ棚にはたくさんのイギリス・クッキー、ビスケットなどが並べてあった。店内にはイギリス人の観光客やパリ在住イギリス人の家族連れを多く見かけたことを思い出す。
 サンジェルマンにはモノプリ大型店もあり、そこに行けばEPICより数多くの商品を選ぶ事ができる。そんな中からセレクトされた商品を集めたのがここEPIC店。客層も当然違って見える。同一商品値段の比較は残念ながら今回はできなかった。

 日を改めて久しぶりにモントロー郊外にある大型スーパー、レクレールに行ってみる。前回訪れた時は、確かクリスマス期。正面の飾りが豪華だった。今回は夏のバカンス期でもあり、来客もいつもより少なく感じた。それでもさすがに郊外型の大型スーパー、大変な賑わいぶりである。
 今回訪れた理由は、製菓コーナーの様子見。体調を少し壊しているので、大型店内を隈なく歩く事は控えようと思っていた。バカンスも終わりに近いせいか、店内各所で棚卸の準備がなされている。働いているスタッフは学生アルバイトの人が多く感じる。
 どの棚にどの商品を並べたら良いか。その都度このコーナーの責任者と思える中年の女性に指示を仰いでいる。いつもなら担当のスタッフが要領よく並べていくのだが、アルバイトの学生ではそうもいかない様だ。

 買い物カートにもたれ乍らしばらく様子を見る事に。バカンス中で特にお菓子コーナーは子供連れの客が多い。商品を選ぶのは子供たち、お気に入りと思えるビスケットやクッキーを探しては、棚から取り母親の了解を得てカートに入れる。
 ガレット、ビスケットと言えば、フランスではノルマンディーやブルターニュが主流。そんな中にプロヴァンスや北フランス、リールのガレットもある。リール近辺はその昔、フランドル銘菓として栄えたゴーフルなどで有名な伝統菓子の産地だ。


 なる程、このコーナーでは物の選択を子供たちが決めているのだと、新たな発見をした。久しく忘れていたことだ。パッケージ・デザインが子供向けに作られているのも新たな発見である。今まではそんな事は気にしないで商品を見ていた。

 添付の写真はEPICとLeclere(レクレール)のガレット、ビスケットなどの棚に並ぶ各種メーカの物である。尚、ケーキ、パンなどプラスチック容器に入っている物はレクレールの商品である。 

 


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