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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.115 鈴蘭祭りとメーデー・デモの中止

 5月パリの風物詩と言えば、1日の鈴蘭祭りとメーデーのデモである。このふたつの名物行事が今年はコロナ騒動で中止になった。何とも寂しい話である。こう言う事が起きるとは夢にも思わなかった。

 5月1日、パリ左岸では朝から「鈴蘭、スズランは如何ですか」の呼び声がビルの谷間に流れてくる。その声に合わせる様に鈴蘭の甘い香りが通りに漂う。この声と香りに、五月が訪れた実感を市民が意識する。パリっ子にとって待ちに待った貴重な日だ。

 この日が近づくとパリ郊外の森や林で鈴蘭探しをする人が増えてくる。その代表がフォンテンブローの森。林道に車を止めて籠を持った人達が我先にと森へと入る。

 森や林で採った鈴蘭は小分けされてブーケに。そのブーケの束を花籠に入れパリの広場や道端で売る。毎年見られる、何ともロマンチックなお祭りである。

 先にパリ左岸と言ったが、勿論右岸でも同様、鈴蘭売りの姿は各所で見かける。昨年はほんの数人だがモントローの広場でも鈴蘭を売る人がいた。

 このお祭り中止で一番の被害を受けたのが、鈴蘭農家である。花屋の注文も激減したと言う。近年パリの鈴蘭祭りで売られる物は殆どが農家で栽培した物、天然物はほんの僅かだそうだ。

 今年は未だフォンテンブローの森へ入る事も、散策する事も許可されていない。地元の人達も11日の解除を待ち焦がれていると言う。我が家でも楽しみにしていたワラビ採りを中止にした。

 同じ日、右岸のリパブリック広場には、旗や手作りのプラカードを持った市民が続々と集まり、忽ち広場を埋め尽くす。メーデーを祝う労働者の集まり。この後、バスチーユ広場までデモ行進が行われる。今年はこのデモも中止になった。

 デモが中止になった事で、参加出来なかった人はアパートのテラスてプラカードを掲げる行動にでた。毎夜8時になると医療関係者を応援するテラス・パフォーマンスが話題になって居るが、1日のテレビ・ニュースでは、メーデーを祝う新しいこの行為を放映している。 

 

 新型コロナ問題で外出自粛令が発されて凡そ50日が経とうとしている。全てが閉ざされた状態で過ごす事の精神的負担は大変なもの、改めてその重さを感じている。同時に家に籠る事で体力も落ちた。

 アキレス腱を痛めて、その部分を補う事で今度は膝に負担が。室内でのストレッチも出来ず。食事は三度三度摂っているので、自然と体重が増える悪循環にかかってしまった。

 家の周り1km以内での運動、散歩は許されている。毎回許可願い持参が義務付けされているので、つい気持ちの負担に。更に高齢者は外出しない様にとの政府の要請にもプレッシャーを感じてしまい出かけるのが億劫になる。

 フランスを始めヨーロッパ各国の状況は、日本でもテレビ・ニュースで日々報じられていると聞く。スペイン、イタリアでも感染者がいくらか減少状態にあるようだ。イタリアでは自粛が緩くなって一部経済活動を認める方向に舵が切られた。

 今の話題はロックダウンをしないスエーデンの現状と今後。この独自の方針がどこまで、自国又は外国の人々に許されるか注視されている。一歩間違えば国の評価にも大きく影響される事は間違いない。

 5月1日のニュースではスエーデンが近隣国に比べ、コロナでの死者が増え続けている事で、国民の不安が募り、政府も今迄の方針を転換するのではと報じている。

 

 フランスでも5月11日をもって自粛緩和の方向へ向かうと首相が議会で演説した。尤も、状況を見ながら対応するとも。どの国の政府もコロナと言う難敵に対峙し、力の限り見えない敵と闘っている。

 各国共に政権への不満を感じる人は少なくない。国によっては初動対応のミス、財政難から医療機関を縮小したからこの結果などなど。フランスでも老齢者施設での対応ミスから感染者、死亡者が増えたと政権を非難する人達が多い。

 実際その通りだと思うが、今は一刻も早く終息へのあらゆる対策を取る事が最大の課題であろう。

 2か月と言う長い自粛生活で耐える事への限界も出始めた。一番の問題はやはり経済の停滞。全ての業種が自粛している現状、各界にその影響が広まっている。当然マイナスの影響である事は言うまでもない。

 最近、特にメディアで目に付くのが、これから本格シーズンを迎える各地のホテル、レストラン、レジャー関連業者への政府の対応。各地で多くの関係者が一応に「今迄に無い苦境、先が見えない」と答えている。

 特に南仏コートダジュールの観光地では、稼ぎ時のパックのバカンス時に営業が出来ず、収入がゼロになった所が続出、倒産、廃業が増えている様だ。

 4月28日、フランスのフィリップ首相は、議会で制限解除に付いて演説を行った。その内容は多岐に亘るが、5月11日以降学校施設、商業施設等の制限が一部緩められると言う。只、レストラン、カフェ、バーなどは従来通り自粛制限を続けるようだ。

 今は11日を待ちながら、政府の新たな対応を期待しているところだ。先の自粛緩和で住まいから100km圏内は移動可能になるので、パリにも出かけられる。カフェやレストランは閉店状態と思うので、とりあえずは様子見の出かけとなりそうだ。

 

ブドウ畑農薬散布で目覚めた地元住民達

 世界中に広まった新型コロナ、色んな国で外出自粛が始まり、あらゆる交通機関が停止状態である。その結果、環境にも影響が出始めている。その事を新聞、テレビなど各メディアが世界に向け報じた。中でも注目されるのが温室効果ガスによる空気汚染の減少。その為、汚染度の激しいと言われる国の景観が一変している。

 中国、インド、ヒマラヤなどの映像を見たが、これほどまでにと思うほど、景色が鮮明に映し出された。自粛前と後では映像操作をしたのではと、思えるほどの変化である。

 我々は豊かさ、便利さを求めた代価として、こんなにも地球の空気を汚していたのか。子供じみた言い方だが、これは人間の反省すべき大きな課題のひとつ。大方の方が私と同じ様な思いをされたのではと思っている。

 一面的な見方と評される方も当然居られるだろう。だがこの映像を見せられると産業革命後の自然破壊を当然視する訳には行かない。

 

 コロナ問題でニュースの大半を占めるフランスの報道機関だが、先日あるテレビ局がこんなニュースを伝えていた。

 画面に映るのは、なだらかな丘陵に広がる広大なブドウ畑である。新芽が出て葉に緑色が濃くなったブドウの木、フランスを代表する典型的な農村風景だ。その畑の中で農薬散布用のトラクターが、まるで水を撒く様に農薬を散布、トラクターは畑を繰り返し移動している。

 畑から目を移すと、道沿いに一戸建ての家並が続く。ひとりの女性が道端に立ち、ブドウ畑の方を眺めている。棒の先に取り付けられたマイクに向かい「これほどの量が撒かれているとは」と、答えている。

 コロナ問題で家族揃って自宅待機を続ける迄は、気づかなかった事だそうだ。夫婦は仕事で職場へ、子供は学校へと普段の昼間は殆ど留守状態の家族である。今、家に籠る事で、今迄見えなかった、気づかなかった色々な事が見えるようになったそうだ。

 子供の喘息症状や皮膚障害、その原因のひとつが農薬にあるのではと疑問を持つ。農薬散布に付いては前から、当たり前の事と受け止めていたそうだ。偶々自粛で家に居る事により、今迄当たり前に見えた事がそうでないのではと思う様になったと言う。

 彼女が住む地方はフランスでもワイン産地として知られる地域。ここでは農業部門でもワインが主要産業であり、経済面でもワイン依存の状態である。ワイン無しでは地方経済が成り立たないそうだ。大量の農薬散布によりワイン業界が成り立つ現状、この環境をすぐに変える事は難しい。とは言え、これで良いとは思えないとも。

 フランスの農業形態は、広大な土地を所有して農業を営む農家が多い。それらの農家は農薬無しでは成り立たないと言う。これはワイン農家に限った事では無く、小麦もトーモロコシ農家も同様である。農薬と遺伝子組み換え問題は、フランス農業にとって一番の課題になっている。

 そういう状況の中、各地で生活の見直しを提案する人達が増えている。コロナ問題を契機に色々新しい世界が始まりそうだ。

 

再びパリのBIO専門店

 11日、コロナ自粛が一部解除される。フィリップ首相の演説によると、多岐に渡り制限解除がされるとある。とは言え蓋を開けて見ないと、どの部分がどの様に解除されるのか実感出来ないと言うのが正直なところだ。

 前回、パリの有機レストラン「ゲンマイ」を紹介をした。実はこの店を紹介する前に、人気のBIO食品専門店を紹介しようと思っていた。市民の関心度も高く消費も増え続けているビオ食品である。紹介したいのは、比較的新しく出来た店であり、人気の店だ。

 その1軒がオペラ座に近いBIO C’ BON。この店は以前日本のBOOK・OFFがあった所でパリ在住の日本人にはお馴染みの場所である。日本食レストランや韓国料理の店が増え続け、サラリーマン昼食の場として賑わう界隈の中にある。

 そんな環境なので日本人利用客も多い。あらゆるビオ食品や飲料を取り揃えているが、中でも人気があるのが凡そ21品目の惣菜である。人参、キューリ、ブロッコリーなどのサラダ、豆、カボチャ、モヤシなどの煮物、中には茹でた栗もある。全て有機栽培で育て実った物である。

 店内に設えた特注食台に種類ごとに分けてあり、客は自分の好みで取り分け、備え付けのボールに入れる。日替わりスープもある。支払いはレジで行う。店にイート・インが無いので、買った後は持ち帰りにする。お昼時は近くの広場にあるベンチに掛けて頂く人が多い。中には歩き食いをする人も居る。

 近くの日本や韓国レストランでお昼を食べると13~15ユーロは掛かる。レストランチケットを持っている人ならその半額位で済むが、無い人も結構多い。

 若い女性客がこの店に多いのは、ヘルシー&ボウテと言う面での利用。更には安い昼食をと言う経済面も考慮して、この店を選ぶ人が多いのかも知れない。

 

 6区マザリン通りにオープンしたのがLa Vie Claire。ここは元中型のスーパーマルシェがあった場所である。近くにカリフォールの中型店舗がありお互い競っていたが、カルフォールが小型店を近くに作るという戦術に敢え無く閉店した。当時ここで働いていたスタッフの話。閉店後は空き店舗状態が続いていた。

 その跡に出来たのがこのビオ専門の店である。私が初めてこの店に入ったのは、開店してから1週間ほど後の事。店の作りは前の店と殆ど変わっていない。只、陳列された商品は当然だが一変していた。全商品にBIOマークが記されてある。

 これらの商品を見て、初めてビオ専門店になった事を知る。それにしても品揃えが豊富、普段スーパーで見かけない商品が棚一杯に並んでいる。店内商品を見ながら店を一巡してみた。時間帯もあったのか客数は少ない。

 一端店を出て、入り口の店看板を見る。la Vie Claire、どこかで見た名前だが思い出せないまま、再び店に入る。入り口近くに果物コーナー、その奥には各種野菜。洋ネギ、土が付いたままのラディシュ、カリフラワー、キャベツなどが並ぶ。

 プラスチックの容器がズラーっと並び、中に色んな種類の穀物が入っている。買う人が欲しい量を自動的に操作出来るシステム。イタリア、タイ、インド、フランス国内産の米や名も知らない穀物、更にはマカロニなどもある。

 飲み物の種類も多い、通常のオレンジ、ミカン、リンゴ・ジュース類の他に豆乳、ココナツ・ジュースと珍しい飲料、バリエ―ションも豊富だ。食品に加えコスメ商品などとBIO関連の集大成と言った感じだ。

 通常のBIOマークは勿論、太陽をデザインした店のロゴ・マークを貼った商品が多い。シンプルだが解り易いデザイン、店のシンボルマークだ。商品選別の最大の目安である。

 出口近くにレジがある。店の広さの割には全体にスタッフが少なく見えた。裏で仕事をする人が多いのだろうか。レジに立つスタッフの方に声を掛けてみる。

 聞いて驚いたのは、la Vie Claire実はオーガニック販売専門店としては老舗との事。1946年、フランス最初の有機農家を始めたアンチャールズ・ジェフロアさんがこの会社を設立した。色んな経緯を経て現在の経営者は創業者一族とは違うそうだ。

 2019年には385店舗がフランスを始め外国で営業している。日本に店があるかどうかは僕では解らないと言う事だった。

 今回上記2店を訪れたが、la Vie Claireが特出するのは、先に記した様にオリジナル商品の多さである。例えば、ココナツ・ミルクなどもショコラとの組み合わせ商品など、他店にない物を作り出して特色を出している。

 BIO専門店が増え続けるパリ、この流れは今後も続くだろう。コストが少し上がったとしても、消費者は納得してBIO商品を買うような気がする。今後もこの業界を注視続けようと思っている。

 


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