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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.65 サロン・ドュ・ショコラ・パリ 2013

 秋の冷え込みに合わせた様に、夏時間から冬時間へと時が変わった。10月の最終日曜日を境に、日本との時差も7時間から8時間となる。冬時間になると嘘のように早く夜の帳に包まれるパリの街。今年の秋は何時もより短く感じる。黄葉を楽しむ間もなく石畳の上に枯葉の絨毯が出来ている。

 

 秋の主要行事のひとつと言われるようになったサロン・ドュ・ショコラ・パリが開催、相変わらず盛況である。トゥサン(万聖節)の祝日を加えた週末の3連休は家族連れで大賑わいだろうと、その前日会場に足を運んだ。会場は何時もと同じ、ポート・ド・ヴェルサイユ国際展示会場の5号館2階である。入場料13ユーロ、相変わらずの混雑ぶりだ。押し合いしながらようやく入場、中は大勢の客で賑わっている。客の多さは何時もと変わらないが、何となくブース間のスペースが広くなっているように思える。人の流れがスムースだ。

   

 まず目を引いたのが、正面にすえられたショコラ製の巨大飛行機。胴体よこにASIANAのロゴがある。最近韓国でもサロン・ドュ・ショコラが開催されていると聞くが、そのPRの一環であろう。そう言えば今回初めて韓国からの出展があった。

 

 エリズ・ショコラテと言いオーナーはエリ・キムさん、まだ若い女性である。お店はソウルにあるそうだ。女性らしい繊細な味と形が持ち味、スイスでの留学経験もありそのソースはスイス・ショコラにあるようだ。物珍しさもありなかなかの評判、沢山の人が集まっていた。

   
 
   

 日本関連では常連組、初参加を加えると過去一番の出展数である。日本のショコラ愛好家も年々増えているとの事、成熟期に向かっていることの証だろう。アイデア、形の完成度など日本独自のものを作り出しているが、小さく固まりすぎの印象を受けるのは何故だろう。今回初出展したという店のスタッフの方が「初めて参加してヨーロッパ・ショコラ歴史の深さに圧倒された」との感想が印象的であった。日本で開催されるサロンとは異なる刺激を受けられたようである。

 
 
 

 サロン・ドュ・ショコラ今年のキーワードはマジック。ショコラに関するあらゆる要素を魔術、魔力としてとらえている。そういう目で会場を回ってみると、ショコラの持つ魔力みたいなものが見えて来るのが面白い。何故これだけの人々を魅了するのか、ショコラが人体に与える効能のマジックなどなど、テーマのとらまえ方が実に面白い。

 

 今回も各ステージで色々のイベントが開催されていた。このサロンのメイン・イベントにもなっているショコラを使ったドレスのショーや、カカオ産地の民族音楽や舞踊など催しも多彩である。今回は中南米の産地国に加えインドネシアが参加している。また有名ショコラティエのデモンストレーションや各種コンクール、ショコラに関する専門講師の講演など、大勢の人を集めていた。

 

 余談になるが、アフリカ赤道直下の島国でサントメ・プリンシペという民主共和国がある。東京の約半分の面積で人口約16万人の小さな国。ショコラに携わる方以外はほとんどご存知ないと思うが、サロン・ドュ・ショコラの参加常連、この業界には欠かすことの出来ない貴重な国のひとつである。

 

 1493年ポルトガル人が初入植するまでは無人島であったらしい。ポルトガルの植民地となり、カカオ栽培が始まる。カカオ、コーヒー、ココナツが主産業とのこと、特にカカオはその質の良さで知られ、この国一番の特産品となっている。ここで採れるカカオは皮と実の間にある白い幕が他の産地物に比べて薄いのだそうだ。その事により実の育成が良く質の良さにつながるらしい。

 

 先日、こちらのテレビでこの島国のルポルタージュをしていたが、中でカカオ・プランテーションを紹介。カカオ農園の歴史、これに携わった人々の苦闘、奴隷の中継点として栄えた島の負の歴史、カカオの希少性と商品としての魅力、さらにそこで働く人々やカカオ王と呼ばれるイタリア人男性の暮らしぶりなど、興味ある画面に改めてカカオの役割とその繋がりを認識したルポであった。真に興味深い国である。

   

 今回ショコラ以外の商品、パティスリーやヴィエノアズリーなどの出展は同じ建物の1階に集合、新たな試みである。2階の会場通路が広り歩きやすくなった訳である。この階も盛況、ビジターにとっては有難い対応である。キャラメル、ヌガー、マシュマロなどの専門店にも多くのお客が集まっていた。ここには各種器具のメーカーも数多く参加、意外だったのはアマチュアの方の購買意欲の高さである。

 

 ここにも日本関連の出展が2店舗あった。ロールケーキの専門店とクロワッサン・ラスクの店である。アイデアの面白さとパリではあまり見かけない意外性でいずれも好評、よく売れていた。

 

 日本からの出展が多かったせいか、会場では昨年より多くの日本人を見かけた。中には着物姿の日本女性の姿もあり華を添えていた。サロン終了後は有名ショコラティエやパティスリー巡りもコースのひとつだとか。食べ歩きを楽しむ日本人グループが街に増えた祭りのあとである。


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