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Vol.45 ルヴァール・ステファン


ルヴァール・ステファン 寒さの緩んだ年明けのパリであった。1月前半のフランスは暖冬、その分雨の日が多い。例年より早く雪解けが始まったのか、セーヌ川の水嵩が増えている。  2日からは通常業務のこちらの正月。三箇日の言葉があるように、この間は正月気分を味わっていたいとの思いが強く、何となく味気ない気分が抜けきれない。日本の正月が懐かしくなる。  賑わったクリスマス市の小屋もいつの間にか撤去された。毎年この時期になると、卒業前のひと時をフランスやイギリスで過ごすという日本の学生が多い。

 以前は日本の若者は見ただけで何となく判ったものだが、最近、韓国、中国の若者との見分けが難しくなった。一番の原因はファッションの共通性、特に3国の若者殆どが似たような装いをしていることだ。言葉を聴いて、はじめて日本人では無かったのだと思う場面が増えてきた。

 6、7年前、中国からの旅行者と言えば、グループが殆どで、何れも紺色の地味なスーツ姿。若い女性は見かけず、殆どが視察旅行と言った感じのおじさん達であった。

 先日、久しぶりにシャネルの本店に行く機会があった。相変わらずの賑わい、中でいかにも金持ちそうな中国の人達が、店で用意したシャンパンを飲み、買い物を楽しんでいる。おしゃれな中国人女性スタッフも増えた。ここでも日本語のわかるスタッフはたった一人に減ってしまった。時の流れとはいえ、何となく残念である。

ルヴァール・ステファン  ガレットがパティスリー、ブーランジェリーのショーケースに美味しそうに並んでいる。パリに欠かせぬ1月の風物詩。この街に良く似合うお菓子のひとつである。日本でもこの時期にガレットを焼くお菓子やさんが増えたと聞く。機会があったら一度頂いてみたい。

 ガレット・デ・ロワについては、業界の皆さんご存知の事と思うので割愛させて頂き、こんなエピソードをひとつ。

 娘さんの大学卒業と就職決定を祝って、パリ旅行にやって来た私の友人。10日間だけキッチン付きアパートを借りてのパリ暮らしである。元旦の早朝パリに着き、その日初めて買ったお菓子がガレットであった。 

 夕食を終えデザートを頂こうと、ガレットにナイフを入れるとガリッと音がする。注意してみると、何と、ナイフの先にアーモンド餡にまみれた陶器がひとつ入っている。これは酷いと、食することなくそのままに。友人は勿論、娘さんも初めてのガレットであったそうな。

 この出来事で折角のパリの印象がいっきに悪くなってしまった。買った店に行き、文句を言いたいと思うが言葉が出来ない。とは言え怒りは収まらない。 

 翌日我が家にやって来た友人、ことの経緯を語るが怒りは未だ消えていない様子である。たまたま我が家に今年初めてのガレットがあったので、お茶菓子として一緒に頂く事にした。ガレット・デ・ロワの謂われ、フェーブの話をすとようやく納得した。初めて食べたと言うガレットも、結構いけると照れ笑い。本当の話である。

ルヴァール・ステファン 2012年ガレット・デ・ロワの名誉を獲得したのはステファン・ルヴァールさん。ブーランジェリーとパティスリーを兼ねた店で、8区ミロメニル通りにある。有名ブランドが集まるフォーブル・サントノレ通り、エリゼ宮前を斜めに入った通りで、メトロ・ミロメニル駅のすぐ近くにある。

 店を訪れた時間は午後3時。通常、商品が出揃い、店内撮影をするには昼前11時頃が一番理想である。ただこの時間帯はお客が多く、中には写真に写るのを嫌う人もいるので、あえてこの時間帯にした。案に相違して店内は混雑状態、次から次へとお客がやってくる。パンもケーキも良く売れる。パティスリー専門店のケーキに比べ、見た目の華やかさにはやや足りないが、味に拘っていると言う感じはストレートに伝わってくる。何れも美味しそうだ。
 ルヴァール・ステファン
 忙しさの合間をぬってステファンさんが店に顔を出してくれた。なかなかのイケメン、若く見えるが二人のお子さんのパパだそうだ。ステファンさんも奥さんもノルマンディの出身。ここに店を構えて5年、夫が作り妻が売るの二人三脚から、今ではスタッフも増え、隣にトレトゥールも経営するまでになった。

ルヴァール・ステファン 2012年名誉ある賞に選ばれて一番驚いたのは、電話でのガレット予約が増えたこと。予約客が訪れる度に、奥の厨房から注文のガレットが運ばれてくる。

 ステファンさんのガレットは餡がアーモンドのトラディショナルなもの、1種類だけである。4人用のガレットを買って持ち帰り、その夜のデザートとした。しっとりと練り上げたアーモンド餡が何とも上品、パイ生地の厚み、焼きのバランスが絶妙でさすがの出来栄えである。中に可愛い陶器のケーキが入っていた。

ルヴァール・ステファン 1月はソルドの時期でもある。合理性に富むフランス人は、無駄な買い物をしないとよく言われる。別な言い方をすれば、けちとも言われる訳だが、それはそれで良しとする国民でもある。そんな彼らが待ちに待ったソルド。普段なら連日満員、行列が出来るといわれる店が、今年は客足さっぱりの様相らしい。国の格付けAAAから陥落したショックが国民に影響し始めたのか判らないが、消費が急激に冷え込んできたのは事実のようだ。

 今年は5年に一度の大統領選である。右、左、どちらが勝っても良い、明るく豊かな国作りをお願したいものである。



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