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小川征二郎

小川征二郎

フードジャーナリスト。現在パリに在住し、サロン・ド・ショコラ等のイベントや、パリの最新パティスリーを取材している。


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小川征二郎のパリ通信


Vol.84 ラ・ベル・イロワーズ

   

 ラスパイユ通りのビオ・マルシェについては、このレポートでも何回か紹介している。毎週日曜日の午前中ビオ愛好家が集まる市場で私も毎週出かけて卵を買っている。パリ郊外にある放飼い養鶏場でとれた新鮮な卵だ。

 ここで買う卵は安心して卵かけご飯にして食べられる。生で卵を食べる習慣のないフランスではこの美味しい卵の食べ方が理解出来なかったようだ。最初に卵かけご飯の作り方を説明した時は驚いていたが、いつの間にか朝どれ鮮度の良い卵を選んでくれるようになった。ワン・パック6個入り、卵の大きさにより大中小の3種類があるが、私がいつも買うのは中、3ユーロの卵である。

 30年前、ほんの一部の人を除き、生の魚を食べられなかったフランス人だが、寿司文化の影響で、今では多くの人が食べるようになった。何時の日か卵かけご飯がフランス人の口に入るのもありえぬ事ではない。現に日本で過ごしたことのあるフランス人で、卵かけご飯が好きになった人もいる。不可能ではないぞ、そんな埒もないことを思いながら毎日曜日朝市で卵を買っている。

 

 ある日曜日、何時ものようにこの朝市に出かけると、市場の中程の位置でエプロン姿のマダム達が横一列に並んで料理を作っている。そう言えば中にひとり男性がいたのを忘れていた。特設調理台の上にはボールに入った大量の卵が置かれている。その台を挟んで講師と思えるマダムが何やら説明をしている。
 パリ市が始めた市場での料理教室、その現場に偶然行き合わせた様で暫く立ち見させて頂いた。スタッフの方から頂いたチラシによると野外料理教室との事である。
 2015年パリ市とRencontes Cuisine&Sante(料理と健康の出会い)と言うアソシエが共同で、健康をテーマとした料理教室を開催。場所はパリ市に点在するマルシェで、週毎に場所を変えて開催している。その主旨は健康と食の関係、バランス良い食事、食の無駄を無くする事などをテーマとして料理講習を行うと言う。
 日曜日の午前中、約1時間の講習を料理シェフと栄養士が担当、参加者を相手に料理指導を行う。誰でも参加出来るが予め主宰者側のホーム・ページに申し込みが必要である。プログラム2015によると、既に9月までのスケジュールが決まっている。
 新鮮な食材を使い、ヘルシーでバランスの良い、しかも健康的な料理を楽しむこの会、新しい食の試みとしてパリ市民の間で受けているらしい。今後どの様に発展していくか今から楽しみだ。

 

 フランスの最西端に当たるブルターニュ地方は古くから海の幸に恵まれた地域ととして有名である。ここで獲れるオマールえびは世界中の有名シェフがこぞって使うと言われるほど人気が高い。魚の種類も多く調理法も多様、更に料理に一番大切と言われる食塩の名産地と言う事で、この地で食を楽しみながら夏場を過ごす食通も多い。

   

 メトロ・オデオン駅に近いアンシアン・コメディ通りに出来た缶詰専門店ラ・ベル・イロワーズの評判が良い。パリでの1号店である。

 ブルターニュの小さな港町キプロンでジョルジュ・イリエルが1932年にオイル・サーデンの工場を創業した。サーディン(鰯)、ツナ、アンチョビ、マクロー(鯖)などを主材料に缶詰め加工品を製造する食品メーカーである。オイル・サーディンはフランス人に最も人気のある缶詰め、スーパーなどの缶詰めコーナーでもツナ缶と並ぶ人気商品だ。オリーブ・オイルを使う伝統的なオイル・サーディンは鰯の頭と内臓を取り除き加熱した後オリーブ・オイルに漬けたものである。ヨーロッパ各国で作られているが、特に鰯を沢山食べる習慣があり、オリーブ・オイルの生産が盛んなスペインやポルトガル物も有名だ。

 ラ・ベル・イロワーズ社ではオリーブ・オイルの他に向日葵オイルを使用するなど、素材の持つ旨味を上手に引き出して商品化いる。同様にレモンや香草、唐辛子などを加える事により味の変化を楽しめるよう工夫を凝らしている。

 魚の種類、加工、調理方法により、商品の数は80種類以上ある。何れも伝統的な調理法をベースに創意工夫をを重ねた物だ。加えて新しいレシピも次々と発表している。色々な魚の旨味にハーブやスパイスを利かせたスープ・ド・ポワソンやコニャク風味のオマール・スープなどは特にお薦めの商品だ。

 カラフルでポップ、更にモダーンさが加わったパッケージ・デザインの魅力も売上向上の一役を担っている。女子や子供に人気があると言われるのも、このパッケージ・デザインの良さにある。パッケージの役割を熟知する企業戦略の勝利と言えるだろう。

 キプロン湾の沖合いに小さな島ベル・イロワーズがある。この美しい島の名が社名になっていると言うのも何ともロマンチックな話だ。

   

 ブルターニュの有名な港町ブレストには本格的な寿司店として知られる「檜」がある。フランス人の寿司職人ザビエル・ポッセックさんが経営する店で、パリの寿司好きがわざわざ食べに行くと言われる位評判の店だ。

 パリで長年日本レストランを経営していた「みよし」のご主人も家族を連れてブルターニュに移住、新しい店を開いている。この地に住んで店をやるのが、長年の夢であったとのこと。フランスで食、特に魚料理に関わる料理人にとって、ブルターニュと言う土地はどうやら理想郷であるようだ。

 

 近くのレストランも店を閉めてバカンスに出かけた所が多い。3、4週間の長期休暇、それが出来ると言うことが我々日本人には不思議に思えるが、やはりお国柄の違いと言う事だろう。


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