Vol.59 ブレ・シュクレ

ブレ・シュクレ

 暦の上では既に春のはずだが、今年の3月は何時もと少し様子が違う。中旬、パリでは珍しい3月の雪となり、思わぬ積雪に。翌朝は-8℃、道路はガリガリに凍り、各種交通機関に影響が続出した。何時もの年なら木々に新芽が開く時期である。今年は春の訪れが遅れるようだ。

 

 この月恒例のサロン・ドュ・アグリキュルチュールに今年も出かけた。事情は解らないが、メインのひとつである大会場が使用されず、やや規模が小さくなった感じである。凝縮された分、密度の濃いサロンとなった。

 

 以前にも書いたが、このサロンにはフランス全土から、農、畜、漁業に従事する人達が集まる大きなお祭りである。恒例のスキー・バカンスで学校は休校中。会場は全国から集まった家族ずれの人達で一杯だった。

ブレ・シュクレ

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ブレ・シュクレ

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 フランスでも農畜産業の後継者不足は他の国同様深刻と言われている。特に畜産農家はフランスの代名詞とも言われるバカンスが思うように取れない。都市部の人達がバカンスを楽しんでいる間も家畜飼育に追われる毎日の現実がある。組合を通じての互助システムでバカンスを取る人達もいるが、なかなか思うように行かないようだ。

 

 今回のサロンでも子供向けの色んなイヴェントが催された。人々の暮らしに如何に農業が大切であるかを子供達に知ってもらう、その為の工夫が各分野で行われている。そんなひとつに料理やお菓子の教室があり、幼稚園や小学生が大勢参加していた。教える先生は材料の成り立ちから料理、お菓子の仕上がり行程を丁寧に説明している。出来上がった作品は親子揃って頂く。楽しいひと時だ。日本の農業後継問題、それに対する政府の対策はどうなのだろうかと、ふと思った。

 

 最近、食関係のサロンに行く時、アバウトだがある小さな目標を決めて出かける様にしている。今年のテーマは私の好きなキャラメルにした。

 

 キャラメルと言えば日本では生キャラメルか塩キャラメルが人気と聞く。輸入品としてはブルターニュ地方の塩キャラメルが有名のようだ。フランスでは塩キャラメルは勿論だが、実は普通のナチュラル・キャラメルが良く売れる。いかにも地味な存在(本当は地味ではないのかもしれないが)と言えそうだが、こちらのパティスリーやショコラティには必ず置いてある定番のひとつである。

 

ブレ・シュクレ

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 今回のサロン・ド・アグリキュルチュールでゲットしたのは、ロ-ラン・ラウイさんのキャラメル。肩書きにアルティザン・キャラメリエとあるように、伝統的な美味キャラメルを作る技を持つ。創業1925年、キャラメルだけを作り続けて88年が経つと言う老舗アトリエの跡取りである。

 

 お奨めに従ってナチュラル風味のものを味見してみる。香り、滑らかな歯ざわり、上品な甘さ、まさしくプロが作った極上の味である。食べ終わった後の口中に残る余韻がキャラメルの命だが、とにかくそれが良い。こういうキャラメルに出会えると本当にうれしくなる。フアンの方も多く次々と注文が続く。いい大人がと思われそうだが、これがフランスの良さ、好きであれば見栄もてらいも無く求めて口に入れる。立ち食い文化とでも言うのか、どのコーナーでもこのての大人達のオンパレードである。

 

 会場を回り、色々見たり聞いたり試食をしたりの繰り返しを重ね、最後にローランさんのスタンドを再訪。ショコラ風味とバラの風味のキャラメルを買う。バラ風味もなかなかで、香りが何とも優雅である。薄板で作ったパッケージの中に16個並んで1箱15ユーロ。決して安くは無いが満足なお土産となった。次のサロンが楽しみである。

 

ブレ・シュクレ

 パリ12区にあるパティスリー、ブーランジェリ、ブレ・シュクレは、パリに住むお菓子好きの人達がブログなどで良く紹介している。グーグルなどでも色んな方が紹介しているので、この業界の方ならご存知の方も多いと思う。

 

 店のオーナーはファブリス・ル・ブルダさん、ホテル・ブリストルのパティスリー部門でスー・シェフを努めた後独立、現在地に店をオープンする。ブリストル勤務前にも色々な有名ホテルやパティスリーで修行を重ね、自他共に認めるこの道のプロである。

 

 オープン当初から美味しいパンとガトーを作る店との評判をとり、その評価を持ち続けている。その間、クロワッサン・コンクールで1位を取るなど話題も豊富。店の構えはさほど大きく無いが、商品の充実度、客数の多さはこの界隈でも群を抜いている。先にも触れたが、多くの人がネットやブログでこの店を紹介しているので、ここでの詳しい商品紹介などは割愛させて頂きたい。

ブレ・シュクレ

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 ブルタさんの右腕的存在、パティスリー部門の責任者である土屋さんは未だ若い日本人パティシエである。この店に入って5年、スタージュから始めて現在のポジションに駆け上った。現在ブレ・シュクレには3人の日本人が働いている。外国人就業の門が益々狭くなっている現状、ブルダさんの度量、見識も立派だが、土屋さんの存在が大きいと言える。ここで修行して日本に帰りお菓子業界で活躍している人も多いと聞く。去年までいた原田さんもそのひとり、大分県の別府で新しい店をオープンするそうだ。最近、パリのレストラン業界で活躍する日本人キュージニエの話をよく聞くが、パティスリー業界でも土屋さんのような存在が育っている。嬉しい事である。