Vol.54 アルノー・ラエール

アルノー・ラエール

 秋が深まると無性にガトー・オゥ・ショコラが食べたくなる。あの濃厚なショコラの風味と、色を増す街路樹の黄葉、街行く人の装いの変化などのイメージが重なって、そんな気分にしてくれるのだろう。何となく秋のパリに良く合うガトー、と勝手に思い込んでいる。

 

 近所にも美味しい店が沢山あるが、アルノー店のそれをと思いメトロに乗る。以前から折があったら一度食べてみたいと思っていた。

 

 メトロに乗り、セーヴル・バビロンで12番線に乗り換え。モンマルトルの中腹にあるラマルク・コーランクールの駅で降りる。ホームから地上まではエレベーターを利用。改札を出ると眼下に石の階段と美しいパリの街並みが見える。古いフランス映画に出てくるような雰囲気を残したメトロ駅、脇の階段を上り、コーランクールの通りへ出る。道を横切りそのまま登ればサクレクール寺院へと続く。モンマルトルの丘を愛する人なら一度は通る坂道である。道を右に曲がり、なだらかな坂道を少し歩くとそれからは長い下り坂に。

 

アルノー・ラエール

 アルノー・ラエールの店はオレンジ・カラーに包まれたような、しゃれた店であった。お昼前の店内には、若い旅行者のカップルと常連に見える中年夫婦の二組、何れもショコラの箱詰めを買っている。マダムと若いギャルソンが客の対応、時々中国系と思える女性が出来たてのガトーを店の棚に運んでいる。奥で日本人女性が忙しそうに働いていた。

 

 15歳でブルターニュ、ブレストにある名店ギェルムにスタージュで入る。アルノーさんのパティシエとしての第一歩である。2年間の修行後兵役を経て、当時人気第一と言われたパリのペルティエに。その後ダロワイヨーへ移り製菓の技を磨く。更にフオションで5年間と、正にパティシエとしての王道を歩んだ感だ。

 

アルノー・ラエール

 2000年、マダムと一緒にモンマルトル、現在の場所に店をオープン。パティスリーとショコラティエの2枚看板、丁寧な作りと味の確かさでたちまち人気店となる。正統派のフランス・ケーキが好きな方には間違いなくお奨めの店である。その一方で時代に合った創意工夫が商品ひとつひとつに表れている。回りが驚くほどお菓子作りに拘るそうだ。

 

 若いマダムが来店、どれにしようかと思案の様子。店のギャルソンがマカロンをひとつ取って試食を進める。当店お奨めのひとつであるとの事。気に入った様子で箱につめてもらっている。普通のミニ・マカロンよりやや大きめのサイズである。ぺーシュ・アブリコ、マロン、ポム・ヴェール、フランボアーズなど9種類、何れも美味しそうだ。

 

アルノー・ラエール

 道路に面したショーケースに並ぶ各種ガトーの出来栄えも見事である。ひとつひとつのちょっとしたデコレーションにも、繊細な気配りが見る。さすがにメイユール・ウブリエ(国家最優秀職人)の称号にふさわしい出来栄えである。写真を撮り終え、三種類のガトーを買う。当然の如くガトー・オゥ・ショコラもその中に、ミルフォーイユも美味そうで一個入れてもらう。

 

 アルノーさんのショコラは、前にサロン・ドュ・ショコラで賞味済み。味の確かさは言うまでもない。持ち帰ったガトーは、夕食のデザートで楽しんだ。上質のショコラがたっぷり、甘みもほど良く、文句無い上品な味である。良い味を楽しんだ後は気分も良い、改めてそう思った。

アルノー・ラエール

アルノー・ラエール

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アルノー・ラエール

 2013年春夏のパリ・コレクションが終わり、今回も色々な話題を提供した。世界中のファッション・プレスとバイヤーを対象にしたショーで、主催者側が招待した人だけが入場できる。今回のコレクションに関する諸情報は既にテレビやインターネットで紹介されている。興味のある方はネットで検索出来るので一度お試しをお奨めする。

 

 ファッション・トレンドとは不思議なもので、産業界のあらゆる分野でリンクし、色々な影響を与えている。世界的に有名なファッション・デザイナーが別分野で活躍しているのもそのひとつの表れで、四つ星ホテルのインテリアやフランス新幹線車内のデザインなどを手がけた例もある。更に有名シェフとのコラボで新しいレシピの開発などに関わる人もいると聞く。時代の流れに敏感であるようにと、ファッションに興味を持つ食品業界の方も多い。

 

 このパリ・コレクションとは別に、時を同じく世界中のファッション・デザイナーや企業が集まる展示会がパリの各所で開催された。そのひとつトラノイに出かけてみた。

 

アルノー・ラエール

 トラノイは1993年から始まったファッション関連の展示会である。当時65の企業が参加したとのことだが、今年の参加デザイナーは全世界から1000人、驚くほどの成長振りである。ここ数年はカルセール・ルーブル(ルーブル美術館内の一角)を初めパリ3箇所の会場で開催している。昨年まではファッション関係者であれば、名刺を出すだけで自由に入場できた。ところが今回は入場料30ユーロと有料制に、これには多くのビジターも面食らった様である。それでもビジター数が減っていると言う話は聞かない。

 

 プレス用資料によると、出展企業で最大国はイタリアが全体の約30%、続いてフランスが約20%、日本は20社が出展している。常連国の他に東欧ルーマニアが10社、新顔のシンガポールから6社の出展と、益々グローバル化が進んでいる。この傾向は更に強まっていくようだ。

 

アルノー・ラエール

 バイヤーに関しても、カタール、クエート、サウジアラビアなどの中近東が増え、中央アジアのカザキスタン、ウズベキスタンからの来展があったという。

 

 入場料を取るようになった事で、会場のサービスが一段と良くなった。入場者全員に布製のサックが配られた上、設けられたバーの飲料が無料に。3時にはシャンパン・タイムとなり、好きなだけ飲める。しかも上質のシャンパンである。

 

アルノー・ラエール

 女性対象のトレンドとしては、シンプルで軽やか、ワンピース風な形のデザインが多い。色は赤、オレンジ、ピンク、ブルー、グリーンなどの爽やか系が目立つ。プリントも可憐な花柄などが多い。黒、白、生成りはシーズンカラーの定番、普遍といえる。それにしても、造る側の人殆どが黒い服を着て、消費者には毎回トレンド・カラーを提案するという不思議。ユニホームと思えば納得の部分もあるが、何とも可笑しな話である。

 

 年2回のこの催し、参加する人達の楽しみと言えばレストラン、カフェ、パティスリー巡り。寸暇を惜しんでお励みの様子である。会場から近い事もあり、アンジェリーナなどは午前中から行列が出来ていた。ラデュレ本店もクリスマス期並みの混み様である。ちょっと名の知れたレストランなどは予約を取るのが大変である。ファッション関係者は食べるのも好きという説は当たっているようだ。